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(図1)
現代(もちろん当時の現代です)日本の高校生、主人公桜木カズマが突然中世フランス−作中ではフロリンと称されています−に召喚され、”伝説の勇者”として、百年戦争を終わらせるため活躍するという話です。
作者は王領寺静。聞き覚えがない方でも「藤本ひとみ」先生といえば分かるかと思います。
現在でも中世ヨーロッパを舞台にした小説を多く発表している藤本ひとみ先生が、当時変名で書いていたのがこの「黄金拍車」。
安彦良和先生のイラストも素晴らしいこの作品は、まだ「ロードス島戦記」も出たばかり、「スレイヤーズ」も発表されておらず。
ライトノベルという言葉すらない時代に、冒険ファンタジー小説として多くの読者を獲得しました。
当時は文芸誌「野生時代」に一挙掲載、という形をとっていたこともあって−ライトノベル専門誌など存在しない頃です−、創刊当初のスニーカー文庫は、子供向けというより、純粋に冒険小説ファンに向けた内容が多かったようです。
内容もただファンタジーというわけではなく、現代とは全く違う中世の性的モラルをカズマの目を通して描写し、読者を驚かせていました。同性愛・獣姦OKというのは、なかなかすごい話です。
「黄金拍車」は、この後「骸骨旗トラベル」「剣奴王ウォーズ」とシリーズを重ねていきますが、平成4年「剣奴王ウォーズ」2巻を最後にバッタリと刊行が止まってしまいます。
「ロードス島戦記」「アルスラーン戦記」のヒットなどで、ちょうど最初のライトノベルブームが到来していましたが、ブームの到来が来るのを待たず王領寺=藤本先生はライトノベルの世界から去ってしまいました。
あれから16年、ロゥマに迷い込んだカズマの活躍の続きを読むのはもう不可能なのでしょうか。
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(図2)
「ポート・タウン・ブルース」でデビューした麻生俊平先生の第二作であり、富士見ファンタジア文庫を代表するシリーズになりました。
現代を舞台に、”遺産”というオーバーテクノロジーを手にした人々が繰り広げる破壊・殺戮などの陰惨な事件を、 おそらくライトノベル史上もっとも「平凡かつ凡庸で善良」な主人公・矢神遼が、人の闇と向き合いながら戦うストーリーは、丁寧な描写と衝撃的な展開が印象的です。
担当は当時リアルに高校生でしたので、他人が見たら引くくらいハマッていました。
最終巻のラストが納得いかなかったのも、思い出です。
完全に30歳以上向けの内容になりつつなりますが、今回は以上になります。
次回のネタも古いラノベです。
(担当 有冨)
※この記事は2008/11/12に掲載したものです。