神坂一先生の作品に「闇の運命を背負う者」(角川スニーカー文庫)(図1)というのがあります。
(図1)
非常に凝った構成の、隙のない、また救いのないストーリーとして完成度の高い作品です。
内容はというと、ありていにいえば「いやー、選民思想って、ほんとに恥ずかしいものですね」というテーマと、
「でも強大な力をふるうのって楽しいでしょ?でしょ?」
という、自分の代表作である「スレイヤーズ」の登場人物たちを、ある意味揶揄するようなテーマも込められています。
ストーリー展開として特徴的なのは、自分たちが正しいと思っていた「運命(さだめ)」が、実は他人から作られた虚構の
ものである、というところに加えて、にもかかわらず与えられた”力”を使わずにはいられないという、二重の意味での
救いのなさが、この作品を非常に重厚にしています。
というか、巷間で言われている「ライトノベル」というものの定義から、そうとう逸脱したストーリーにも思えるのですが、
もちろん、神坂先生の文体は、それを感じさせません。
「スレイヤーズ」旧装第一作(図2)に掲載されているの編集部から後記に、『もうすこしオリジナリティがあれば、スレイヤーズは
大賞を受賞していたかもしれません(「スレイヤーズ!」は準入選作)』という趣旨の内容があります。
(図2:リナって貧乳!)
”一見ありがちに見えて、その実典型からズレまくった人物や設定”を表現したかったからだと思います。
これは『休日の時だけ異世界で冒険をする』という恐ろしく主人公に都合のいい設定の「日帰りクエスト」(図3)や、
『スペースオペラの主人公なのにむちゃくちゃセンスのない主人公』が出る「ロストユニバース」(図4)も、
定型からズレたキャラや設定なので、これは神坂作品の「基本」ともいえると思います。
(図3) |
(図4) |
長年の掲載誌だったドラゴンマガジンの隔月刊化や、長編シリーズの新装版発売が、今後の展開に新しい状況を
もたらすのでしょうか。ファンとしては、長編シリーズの再開がなによりも待ち遠しいところですが、
新作「アビスゲート」(図5)や「ドアーズ」(図6)など、新作も積極的に発表しているだけに、「スレイヤーズ」だけにこだわるのもファンの野暮かもしれません。
(図5) |
(図6) |
いくらでも類似作品が出てくるものですが、前回も書いたとおり、なかなか現れてきません。
むしろ、小説よりも、少年マンガにスレイヤーズ的傾向が見られます。
「ワンピース」(図7)などは、”登場人物が最初から世界最強クラス”などの部分で共通点が見られますし、ファンタジー世界を舞台にした
コミックには、それぞれスレイヤーズ(だけではないでしょうが)の面影が大なり小なり見受けられます。
(図7)
「新ソードワールドリプレイ」(図8)だったりします。
(図8)
以上、とりとめなく「スレイヤーズ」について書いてきました。
次回はおそらく「キノの旅」です。
小倉店では「スレイヤーズ」新装版、および「スレイヤーズすまっしゅ。」強化買取中です。
(図9:新装版とすまっしゅ。お持込みお待ちしてまっしゅ!・・・サムッ)
(担当 有冨)