「銀河英雄伝説」で提示された”一般的には無能力者だが、非常時には英雄”という主人公像は、「無責任艦長タイラー」をはじめとする、さまざまな作品で散見されるようになりました。
最近では、この作品もそうです。
(図1:イラストは『ゼルダの伝説』などのコミカライズの姫川明さんです)
また、「小さな国〜」の舞台設定は、作中に出てくる架空の国以外は、ほぼ現実世界と同じになっています。
”ファンタジー”や”異世界”を舞台にすることが多い(と思われている)ライトノベルですが、実際には現実世界、あるいは現実に類似した世界を舞台にしている作品が非常に多くなっています。
有名なこの作品も、この作品も、基本となる舞台は現実の日本です。
(図2)
コミックに比べて、ライトノベルでは現実世界が舞台になることが多くなるのは、
”メインの読者の年齢層がコミックよりやや高い”
”絵ではなく、文章で表現する媒体なので、現実社会が舞台だと読者がイメージしやすい”
という事情もあるのだと思います。
話がものすごく逸れましたが、「銀河英雄伝説」や「タイラー」のあとを継ぐ作品としては、以下のようなものがありました。
(図3)
「でたまか」はスニーカーで長期シリーズとなりましたが、こちらは「タイラー」の影が多く見受けられます。(図3)
「神無き世界の英雄譚」は、近年には珍しいほどの堂々たる宇宙戦記ものでしたが、3巻が出たところで一時中断(あるいは完結?)しています。
この種類の話の一番のネックとなるのは、作者や出版社、および読者が、長期にわたるシリーズ展開に耐えられるかどうか、なのかもしれません。
もともと「銀河英雄伝説」は、SFばかりだった未来を舞台にした小説世界にたいするアンチテーゼであったとともに、 架空戦記というジャンルも確立させた作品でもあります。そして、それを軽妙に奪胎してみせたのが「タイラー」でした。
ともに発表から20年ほどの年月がたち、多くの作家が、それら2作品の”読者”だった世代となっています。
さまざまなライトノベル作家が2作品のあとを追いかけていますが、田中芳樹氏「タイタニア」(図4)のアニメなどの情報を見ていると、未だ追いつくのも困難なようです。
(図4)
次回のネタは、おそらく「ひぐらしのなく頃に」です。
(担当 有冨)
※この記事は2008/09/24に掲載したものです。