| 岩井の本棚 「マンガにでてくる食べ物」 第26回 |
モチ
（図1）
そろそろ正月気分も抜ける時期ですが、今週発売くらいの4コママンガ誌には（OL進化論含む）、 たぶん、以下のような話題に触れている作品、すごく多いとおもいます。
それは正月太り。
「ねえ、ちょっと太っちゃったんじゃないの？」
「正月太りね」
「おモチの食べすぎじゃないの」
このフレーズ、雑誌を5誌見れば10個くらいは散見できると思います。
仕事始まりでこんなセクハラ的会話を女性社員にバッツンバッツンしたお父さんも多いんじゃないでしょうか。
たぶんでもそれ、向こうさんには嫌われてますよ。
ちなみに4コママンガ界では、ホノボノ系4コマから萌え系4コマまで、登場する女性はみな正月明けに急にスタイルを気にしたり、 もちの食いすぎを嘆いてみたりします。することになってんです。
それは「あずまんが大王」ですらそうなのです（図1）。
ところでおもち、正月にいくつ食べましたか？
お雑煮で2個、というのが平均値ではないでしょうか。
昔はというと自分の家で餅をついたり、米屋にちん餅を注文していたのを覚えていますが、 最近はよほどの大家族か豪農でもないかぎり、そういったことしなくなったとおもいます。
かびない真空パックのもちが出来てからというもの、おそなえ餅同様、おもちを食べる実数は少なくなりましたね。
お供え餅を割って食べる、鏡開きなんて風習、ここ15年くらいしてない気がします。
（図2）
（図3）
何しろ第1話からしておもちを「うまいもんだなあ」と、皿をペロペロ舐めるほどのお気に入り具合です（図2・図3）。
（図4）
でもこれね、ドラちゃんものび太も、もちに何にもつけずに食べているんですよ。
確かにつきたてのおもちは何もつけなくても美味しいけど、130個もそれで食うのはありえないですね。
うどんにタレをつけず水をつけてすする、という無味フェチ、渋谷店のK山さんだってそんなに食いませんよ。
（図5）
お雑煮でもちを2杯、3個も食べたら、背油ギトギトのラーメン一杯食うのと同じカロリーですよ。
ちなみにドラちゃんが130個もちを食べたとしたら約30000K/calで、常人の12日分の摂取量です。
ドラえもんはロボットだから太んないとしたって、首輪が肉に食い込んでる程度には膨らんでるでしょね。
ついでに、もちのように柔らかそうなつぶれドラえもんをどうぞご覧下さい（図5）。
子供のころは、特に周囲に農家が多かったわけでもないの、正月になるともちつき大会があったり、 近所でもちをつく家があったりして、一年に一度はつきたてのもちを食べる機会がありました。めちゃくちゃ美味かったですね、やっぱり。
ただつきたてのもちほど柔らかいので、のどに詰まりやすいのも事実。
地方ニュースの年始第一発は「老人がもちをノドに詰まらせて死亡」だったりします。
2年前でしたかね、NHKのニュースで「今年はもちをのどに詰まらせて死亡した方、全国で○○名」などと統計まで出してましたが、 けっこうな量でしたよ。お盆の時期の水難事故とか、ちょっと大きめの台風の被害者よりも多かったと思う。
海難事故や自然災害よりも被害が大きいくらいだから、モチはなかなかひとかどのデンジャラスな食べ物、といえるわけです。
（図6）
「あ〜ん、来週も絶対観よーう！」って、そりゃ来週、登場人物もうこの世にいないよ！
榎本俊二ってこういうの描くとやっぱり上手いですよね。
余談ですが、ニュースは詳細さがカギ、となると思うのですが、 もちノド災害に関してはそれが「○○さんはお雑煮と酢の物と煮しめをのどに詰まらせ…」 （過去実際にこういう報道を聞きました）などと不必要に詳細に報道されると 「そりゃトシの割にはずいぶん色んなモノかっこんだものだよね、若いよね」だの 「お雑煮と酢の物って食い合わせ悪いわよね、ヨメはなに考えてるのかしら」などとヘンな突っ込み所を茶の間に与えることになり、 残された遺族的にはあまりいい気分しないと思います。
酢の物と煮しめ、の部分にNHKの悪意を感じるのは僕だけでしょうか？
あとモチがのどに詰まったら掃除機を口に突っ込んで吸い出す、というのは毎年ワイドショーなんかで語られますが、あれってどうなんだろう？
苦しむ年長者を若い衆で抱え込み、その口に汚い掃除機の吸い込み口をぶっこみ、 挙句の果てにスイッチを「強」にしてガーガー吸い出す、というのは、命からがら助かったとしても、家庭には微妙な軋みを残しそうです。
ひごろおじいちゃん、おじいちゃんとやさしく接してくれる孫やヨメが鬼のような形相をして口に掃除機ガーガーつっこんでくる、というのはけっこうな悪夢ですよ？
…などとボンヤリ考えていたんですが、今日発売のモーニングを読んだら、やっぱりOL進化論にモチ太りの話が出てました。
あまりに予想とおりでちょっとガッカリ。多分来年も再来年もモチ太りの話、登場するに違いないですね。
※この記事は2005年1月7日に掲載したものです。
（担当 岩井）
（担当 岩井）
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