岩井の本棚 「マンガにでてくる食べ物」 第19回 |
フライ・焼きそば・焼きまんじゅう
埼玉県北部(とくに行田市・熊谷市)に在住されている方なら「あああれか」と思う方もいると多いでしょうが「フライ」なるものをご存知でしょうか。フライって、白身フライとかエビフライとか? ではなく、なんと説明すればいいのでしょうか。
お好み焼きのようなものですが、お好み焼きと微妙に違う・・・まずお好み焼きに比べて、具が簡素。
キャベツと肉が少々、くらい。またお好み焼きに比べて身が薄く、広島風お好み焼きと大阪のお好み焼きの中間くらいの薄さ。
肉や魚介があまり入っていないため値段も安く、300円〜400円くらい。
ソースはお好み焼きソースではなく、ウスターソースをつけて食べることが多く、醤油をかける人もいる・・・という、お好み焼とももんじゃとも異なる不思議な食べ物です。
埼玉県の行田市には、このフライの店が30件近くあり、気取らない食べ物として老若に人気があるのです。
僕も熊谷市に住んでいたころによく食べましたが、フライ店は必ず焼きそばを売り物にしており、この焼きそばが今から考えるとジャンクで美味かったですね。
濃ゆいソースとキャベツと微々たる豚肉のひとかけらが入った焼きそばは、屋台のものとは異なってソースでテカテカしており、しょっぱくて美味。
また食べたいですよ。
埼玉北部から群馬に至る道には、焼きそばのほかに焼きまんじゅう、なるものを売りものにする店が出てきます。
この焼きまんじゅう、谷口ジローの傑作食べ物マンガ「孤独のグルメ」に登場しています。
焼きまんじゅう、というとやっぱり焼いたおまんじゅうを想像しますが、なんと言えばいいのかな・・・とにかく不思議な食べ物です。
自分は屋台で食べたのですが、
- 串に刺さっている
- 肉まんの皮、ないし蒸したナンのような食感のものを小判状に丸め、軽く火にあぶっている
- タレは甘辛く、甘ミソ味。かなりの甘さ。
- 巨大。直径8センチくらいのものが4個串に刺さっている。たいていの人はひと串で腹いっぱいになる
ふかふかしていてけっこうおいしく食べれた覚えがありますが、3個目に取り掛かるころにはあきました。
味が単調でくどいのが原因でしょうが、異常なボリュームも原因です。
腹いっぱいになる量でひと串150円。そういう意味では安いです。
本編では、主人公が昔別れたイイ女との思い出に浸りながら、群馬で焼きまんじゅうを食べる・・・という、深いのかアホなのか判別しない展開。
焼きまんじゅうはこどもかおばちゃんにこそ似合う食べ物であり、バシッとキメたいい年齢のオトコが、昼も昼からフラれた女のコトなんかボーッと考えて「あいつはイイ女だったなあー」などと余韻に浸りながら食うもんじゃないんです!
雰囲気的には、実家に帰ったら、祖母が「ヨシ坊、これ食いなせ、これも食いなせ」などと戸棚から引っ張り出してきた野暮ったいお菓子(ブルボンとかの)、のイメージです。
そういうおばあちゃん臭がする郷愁の味なのです。
このマンガはいい男がマンジュウかじるそのバカバカしさをシニカルに描いてますね。
ほかにもこの「孤独のグルメ」は、新幹線の中でシューマイ弁当を食べて車中をシューマイのにおいで充満させたり、ハンバーグ店で外国人労働者をかばって店主に関節技を決めたり、日雇い労働者に混じって定食屋でトン汁食ったりと、谷口ジローの圧倒的筆力でだまさせそうになるのですが、意味不明なストーリーが随所に見られます。
とはいえ、食べ物マンガではグルメに偏らず、B級性に徹した内容がすばらしく、当コラムを読むような方にはぜひとも一読をお勧めしたい好著です。
余談ですが、焼きそば店、フライ店はたいてい、おばあさんが一人でやっているような生活臭のある軽食店ばかりです。
学生時代から太っていた僕は、焼きそばを食べるたび、おばさんにいきなり「大盛りにしといたから!」などと宣告され、頼んでもいないサービスを過分に受けがちで、 内心「あの子たくさん食べたいけどお金がないから普通盛りでガマンしてるんだわ」「きっとそうよ。大盛りにしてあげよう」などと思われているのかと思うと情けなります。
その頻度もメチャクチャ高く、学生時代その手の店に行くと3回に1回は思いやりサービスを受けていました。
別に太っているからといっていつもいつも大盛りばかり食いたいわけじゃないのですが、サービスされると「アリガトウございます!」とニコニコしてマフマフ食わねばならないし、キャベツひとかけら残すわけにはいかんのでプレッシャーがかかります。
それにしても謎なのは、そんなに僕は腹へらしにみえたのでしょうか。太りは本当に損です。
※この記事は2004年9月13日に掲載したものです。
(担当 岩井)
(担当 岩井)