岩井の本棚 「マンガにでてくる食べ物」 第2回 |
ジャイアンシチュー
もちろんアニメもやっているし、映画も続行中。国民的キャラクターにして、世界でも愛される偉大な「ドラえもん」。ドラえもんの好物はドラ焼きですが、初期にはおもちが大すきでした。
ドラえもんの身体は中に精密機械が入っているようには見えないやわらかさですが、あの秘密はモチ好きのモチ肌だからかと納得した次第です。
ドラえもんにも思い出に残る食べ物がたくさん登場しますが、自分的には「ジャイアンシチュー」がマストです。
ジャイアンというと、ボエー〜〜でおなじみジャイアン・リサイタル。
ジャイアンの歌を聴くと、気分が悪くなり、失神、放映したテレビは壊れる、ゴキブリは死ぬ、という恐ろしい怪音波なのですが、ジャイアンには歌のほかにも料理という趣味があるのをご存知でしょうか?
ジャイアン料理研究会、という名前で発表されたのがこの恐怖の料理「ジャイアンシチュー」なのです。
材料はというと「ひき肉とたくあんとしおからとジャムとにぼしと大福と・・・その他いろいろだ。
ジャイアンシチューと呼んでくれ」とジャイアン自体が何の疑問も感じないで言っています。
甘いんだか辛いんだかコクがあるんだかないんだか、全然分からないこの料理。
「どうだ、うまいか?」と聞かれたスネ夫が「・・・すごい!」となきながら答えたのが、全ての答えだと思います。
のび太はドラえもんからもらった何でも美味しくなる粉末「味のもとのもと」でジャイアンシチューを見事平らげて・・・という話ですが、さらに何年後かでまた、ジャイアンシチューがパワーアップして登場するのです。
今度はジャイアンの歌を聞きながらジャイアンの手料理を味わう・・・という恐怖のディナーショウ。
史上最悪のショーといっても良いでしょう。
気になる材料はというと「さてみそで味をととのえて・・・ジャムとたくあんとセミのぬけがらを・・・」とあります。 前回と共通しているのはジャム、たくあんなので、この二つが入っていないとそれはジャイアンシチューではない、といえます。
それにしてもセミのぬけがらはそれ自体すでに食べ物でないですね。
セミのぬけがらを煮込んでいるのは想像つきません。
ぬけがらって、あの茶色いカサカサのやつですよ。虫の脱皮したカラですよ。それをみそで煮込む。シチューなのにみそ。最高です。
気になる味は、オチが、ジャイアンが味見したらひっくりかえってディナーショーが中止になった、という具合で、作った当人も食中毒になるような凶悪なシロモノなのです。
作る料理全てが吐き気をもよおす出来栄え、まさに芸能界で言えばインリンの作る料理にも匹敵します。
ジャイアンシチューこそが最もまずい料理、と言い切っても良いでしょう。
八年位前ですか、ダウンタウンの番組で、まずいジュースというのを作って売り出したことがあるのですが、 これ、無色透明なんですが、飲んだら、まず浅田飴の臭いがして、しかも辛い。
わざわざまずい物をつくった松本のアイデアの発端は「まずいと分かっていれば逆に興味が湧いて売れる」というものでした。
実際に僕のように気になって買った人もいたようですが、ジャイアンシチューはまずいと分かっていても、絶対に食いたくないと思わせる凄みがあります。 さすがマンガ界屈指のヒール。
この話含めて、ジャイアンリサイタルの歴史全てが網羅でき、ジャイアンシチューも掲載されているハードカバーの文庫「ドラえもん ジャイアン+スネ夫編」は全編ほとんどジャイアンの話、というおなか一杯の出来栄えです。
ジャイアンシチューに出会いたい方は是非。
※この記事は2004年6月24日に掲載したものです。
(担当 岩井)