岩井の本棚 「マンガけもの道」 第23回 |
なめ猫ぬりえ
今でこそ、どっからどう見てもつなぎ目がわからない、これ本当にコラ?と思うような高度なアイコラがたくさんありますけれど、 昔はもうあからさまにこっからこうすげかえただろ、陰影もつき方おかしいぞ、とつっこまざるを得ない底レベルアイコラが溢れていました。そしてイメージブチ壊しなコラ(乳輪がバカデカかったり)で、ウブな青少年を嘆かせたりしたものです。
でも、ほんとうに完成度が高いコラージュ、ってのは、たぶんリアルだ! って云うのとは別だと思いますね。
首のラインがぜんぜんわからないとか、光の位置関係もおかしくない、じゃなくて、魂のおもむくまま、衝動が駆け抜けるまま貼り付けてみたら、 うっかりすごいのできちゃった!! ってのがほんとうに素晴らしいコラージュだと、思いますね。
陰影だ? 解像度だ? バカ! PCなんか使うからダメなんだ。ちょっと来い、これ見れ!! 反論はそれからだ!!!
ハァハァ、ハァ、ハァァァァ・・・・・。やれやれやっと落ち着いた。
わかっていただけましたでしょうか? これが本当のコラージュ・センスというものです!!
ハサミとノリと写真製版だけで、これだけのものを作れるか?いや作れません!!
着物を着たネコが、なんかコタツに入ってるよ・・・?
あとネコが虚空見ながら編物してる・・・手にはちゃんと編み棒持ってるよ・・・。
あと奥のネコ、チェックのバスローブ着て青い長靴はいてるよ・・・ああすごいいいセンスですよねぇ。
テレビの脇にはトランペット。その脇には暖炉。コタツにはミカンとコーヒーセット。床にもなぜかマグカップがおいてある。
ネコがミカン食べながらコーヒー? 口に残りそうだなあ。 あとコタツに入ってて暖炉? それでひざ掛け? 熱くない? ああそうか、ネコは寒がりですもんね、それくらいしないと・・・ってことあるか! すごいバランス悪。
バカにすんな、どっかからネコの首持ってきて、ハサミで切って貼っただけじゃねえか!! などといわないで下さい!
確かに色んなところから拝借してるんだろうけれども、これをわざわざ選ぶセンスが並大抵じゃないのです!! だってあなた、ネコにこの服着せよう、って、チェックのバスローブの画像なんかどこから持ってくるのさ? ありえないよ。
ネコをコタツに座らせて、ミカンを食わせよう、なんて思うか? ありえないよ。
例えるなら、名古屋の喫茶店のモーニングってすごい豪華なんですよ。
普通はトーストと卵とか、サラダくらいなんだけど、店によっては和風のモーニングもある。
白飯、味噌汁、焼き魚にほうれん草のおひたし、で、すみっちょに所在無さげにコーヒーがある・・・みたいな、 モーニング、を追求するうちにいつのまにか和定食になっちゃった・・・みたいな。そんな場のそぐわなさを感じますね。
そもそもこれ、じつはなめ猫シリーズのパクリなんですよ。
80年代初頭。暴走族が社会問題となり、リーゼントにグラサン、ツッパリハイスコーロケンローなんて口ずさみながら、 アホなパッパラパー学生が跋扈し、校庭で暴走行為をしたりムダに尖って窓ガラスを割ったり、腐ったミカンに例えられて泣いたり、 シンナーでらりぱっぱになったりしていたあの頃。
そんな社会現象をパロディにしたキャラクターグッズ群で「なめんなよ」つまりなめ猫シリーズがあったのです。
ネコの背中に棒を入れ立たせ、雄ネコは短いガクランにボンタン、雌ネコはセーラー服に長いスカート。
額には「なめんなよ」のはちまき。見た事ある人も多いでしょうね。
それを駄菓子的展開で無版権で勝手に作ったモノ。これがその「ぬりえ」。
手元にあるのはこれだけですが、たしかネコがラジカセを抱えたツッパリ風の奴とか、 ネコがパーティドレス着て集まってる奴とか、4種類くらい作られていたようですよ。
ただどれもこれも、これ元不良のニィーチャンがトルエンでも吸ったあとにパパッとでっち上げたんだろうなあ、 と思うような、豪華絢爛、の「絢爛」の部分だけ強調したみたいなきらめく悪夢的映像になってたのは確かです。
と、思い直してタイトルのぬりえ。そうこれ、ぬりえなんだ、と1ページめくると、さらにビックリ。
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ネコらりってんじゃねえか!!
あとなんか顔、かわいくないよ! 目も細い、こわいよ! こわいよ!!
これは、ぬりえはいいとして、じゃあ何色に塗るのか? ぼくたぶんこれ、子どもが怖がってついムラサキとかオレンジのクレヨンでグワーって塗りつぶしちゃって、 それ見た親がビビって児童相談所に相談するような事態を生む気がする。
なんですか、たぶんキティちゃんとかマイメロが支持されるのって、動物の生々しさが排除されてるからですよね。
たとえばキティちゃんの好物はアップルパイ。 マイメロはアーモンドパウンドケーキ。だから擬人化もすんなり受け入れられるんですが、 なんかこのインチキなめ猫集団は好物が鳥肉とか、生きたカエルとか、 カマキリとか捕まえて食べそうでちっともかわいくありません。擬人化が中途半端なので、 こいつらはたぶんブーブー屁はこくしタンも吐くし、酒飲んだ翌朝は舌が真っ白で息が臭そうな気がする。
人間とけものの生臭さをあわせもったビーストとしかいえません、この形相は。
やっぱり、ぬりえのほうは顔をデフォルメしたほうがよかったんじゃないかしら。
でもまあこのぬりえをつくった人は、よかれとおもって顔をリアルにしたわけだし、 よかれとおもって背景にチョウチョを舞わせたんだろうし、 よかれとおもって寸詰まりネコをコタツに入れてみたりしたんだろう、とおもうと、ひとの思いやりとか良心、ってのは本当にコワイですね。
悪気のない人には何を言っても通じないですもん。
画像、これ印刷して、みなさん是非ぬりえして下さい。首、ななめってるじゃんとか、猫の目ロンパッてね? とかそういう無粋なことはいわない。
童心に帰って、是非かわいいネコちゃんを完成させてあげてくださいネ♪
ぼく的にはこの猫がすごい好き
(図5)
青い長靴カワイイ
※この記事は2006年1月31日に掲載したものです。
(担当岩井)