2009/5/28 21:00掲載
まんだらけ 中野店 4F 大予言

古史古伝を考へる


佐治芳彦『超知ライブラリー 超新論 古史古伝』2004年 徳間書店 \840(定価\1470)

古史古伝とふヂャンルがあります。
古史といふからには一応歴史の範囲になりますが、古神道と密接な関係が生じるため精神世界系のヂャンルの定番になってをります。
とくに八幡書店が精力的に古史古伝を発掘し復刻することでかつての秘教ブームの一翼を担ひました。
しかし、その後はなんとなく盛り下がってゐるといふか、なんとなく下火の印象があります。
原因として考へられるのは一通りの古史が出尽くしてしまった、といふこと。
また鹿島昇のやうな主だった牽引役が死去してしまったといふことがあるでせう。
(さういへば鹿島昇顕彰会の太田龍氏も先日逝去)

更らにいへばもっと本質的な問題として、古史、先史と云ったことになると証明しようがなくなるので自分の都合の良いやうに幾らでも我田引水的な援用、牽強付会の解釈が出来てしまふ、といふことがあると思ひます。
つまり、自分のなんかしらの意図(それは政治的なもの、宗教的なもの、個人的なもの色々あるでせう)を古史を利用して実現しようとする動きが露骨に見られるので、興醒めしてしまふのです。

それゆゑワタクシとしては古史古伝といふヂャンルそのものはあんまり評価してゐません。
同列に扱はれてゐる古神道・神仙道と云ったヂャンルと比べればまったく生命がなく、死んでゐるやうに思へます。
週刊誌の三文記事的な面白さはあるかも知れませんが、決してそれ以上ではなく積極的な価値がないのです。
しかもその論拠が週刊誌以下の妄想、飛躍、論理破綻に基づくものであれば、害ありて益なし、であります。

しかし、また「これこそが封印された真実の歴史だ!」的な書き方でなく、なぜかういふ偽史が世に出ることになったのか、といふやうに考へるのであれば、そこに意味はあるでせう。
どうしてさういふフィクションが構築されたのか、そのフィクションに込めれられてゐる意図は、そのフィクションのモデルになった事実があったのではないか、などなど考へて行くとかなり含蓄のあるものになります。
最終的には歴史、過去といふものは全て消え去ったもので畢竟フィクションであるのだから(「事実」は今・現在しかないといふ意味で)、そのフィクションから何を学ぶかが大事といふことになり、正史・偽史を厳密に峻別しようとすること自体がナンセンスといふことにもなりませう(物証がない以上、推論や妄想の競合に過ぎない)。

本書は最近上梓されたものでもあるせゐか、以上のやうな問題点をも含めたスタンスで書かれてゐます。
しかも古史古伝論者であった著者自らが当時の生々しい内部事情も含めて赤裸々に披露して「偽史」の存在意義を述べてゐるのですから、いままでの週刊誌的な古史古伝書とはかなり違ひます。
読むものは「歴史」といふものの存在意義自体の再考を迫られませう。

著名な古史古伝のあらすぢも一通り収録してあり、さすが超知ライブラリー、つくりが親切です。
古史古伝ブームを俯瞰するには最適な一冊。
まんだらけ大予言にて是非。


(担当 山口ケン)

ご注意点

掲載の情報が販売情報の場合
  • 掲載商品についてのお問い合わせは(指定がある場合は上記コメント内に記しておりますのでご確認ください)開店30分後からの受付となっております。各店の開店時間は、店舗情報にてご確認ください。
  • 掲載の商品は店頭でも販売するため売り切れる場合がございます。
  • 商品の探求は、専用の探求フォームをご利用ください。
掲載の情報が買取情報の場合
  • 掲載の買取価格は商品状態、在庫によって予告なく変動します。

中野店 新着通販商品

あなたは18歳以上ですか?

こちらの商品には成年向けの内容が含まれております。

お問い合わせ (営業時間:12:00〜20:00)

まんだらけ中野店(詳しい店舗地図はこちら)
〒164-0001 東京都中野区中野5-52-15
TEL:03-3228-0007 / e-mail:nakano@mandarake.co.jp

告知

まんだらけWebコミック ラザ

新種発見! まんだらけWEBコミック ラザ
新人作家さんをメインに「こんな面白い漫画があったなんて!」「これは新しい!」という作品(新種)を毎週月・火・水・木・金曜日に連載していきます