A「今日は祇園祭を初めとして日本全国の神社の多くで夏祭りが行はれる日ですが、どうしてこの日に例祭が集中するのかはハッキリわかってませんね。ただ7月17日はノアの箱舟がアララット山に漂着した日ですので、それに関連付けて色々詮索する人もゐます」
B「色々とは?」
A「日本と古代ユダヤが何か関係あるんぢゃないか、とか」
B「所謂日猶同祖論ですね」
A「さうです。最近かなり下火になってきた感はありますが、まだ根強い説です。一部の人達が或る意図を以って執拗に流布してるやうなのでね。日猶同祖論でもとくに徳島県の剣山をソロモンの秘宝、または「失はれた聖櫃(アーク)」が埋蔵されてゐる説は有名です」
B「徳島に古代ユダヤですか。ズヰブンと唐突ですね」
A「確かに徳島は不思議な国なんです。
誰れかも「旧国中の旧国」と云ってゐたとかで……折口信夫だったかな。また邪馬台国徳島説もありますしね。日本で一番神聖な麻も徳島産と決まってますし。
秀吉恩顧大名の蜂須賀家が改易されずにずうっと生き残ったのも徳島を握ってゐたからといふ説もあります。現在だって政界の黒幕一族みたいなのが蟠居してますしね。誰れとは云ひませんけど…。ま、色々と不思議なところですから失はれたアークくらゐあってもヲカシクないかも知れません」
B「さらっと仰言いますね」
A「あってもヲカシクないかも知らんけど、そんなに有り難がるものでもない。それに現在のパレスチナでの惨劇を見てると、そんなモンない方が良い」
B「どういふことです?」
A「そんなものが仮に出土したとしても別に誇りに思ふホドのことではない、といふことです。
ユダヤ教徒でもない日本人がソロモンの秘宝を有り難がる理由などないハズです。しかも現在のシオニズムの暴虐ぶりを見れば有り難がるどころかとんだ迷惑です。そもそも日猶同祖論といふのはかつての西洋憧憬心理の、変態的発展なんですね。しかし今やユダヤ・キリスト教的な価値観が世界的・普遍的たり得ないことがわかったのだから、全面的な見直しが必要だと思ひますよ」
B「どうのやうに見直すのですか」
A「まづ、共通のルーツを希望的に見い出さうとしないことですね。
何にも名誉なことぢゃないんだから。さういふ心理の奥には一神教(モノテイズム)こそが絶対的に優れてゐるといふ19世紀的な発想があります。そんな発想も完全に払拭されなければならないでせう。
また「同祖」といふのも飛躍です。たしかにシルクロードを経由して古代ユダヤ文化といふものが日本に渡来してゐた可能性も完全に否定は出来ないでせう。また文化だけでなく実際にユダヤ教徒も来たかも知れません。しかし、それがすべて日本人の祖先であるとか日本の伝統のルーツであると考へるのがヲカシイといふことです」
B「なるホド」
A「仮にカナンあたりの亡民が秘宝なるものをはるばる持って来て四国の山中に隠したのだとしても、それはそれであって日本のルーツそのものとは直接関係ないと見るべきでせう。
また日猶同祖論の論者に基督ファンダメンタリストが多いことからも、彼等の恣意的な論旨には注意が必要です。彼等の真の意図をキチンと把握し、その上で参考にするのであれば問題はないと思ひます。7月17日にはただお祭りを愉しめ良いのであって、何もカナンの地に想ひを馳せる必要なぞないのです」
(担当 山口ケン)
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