神社界と云へば普通「神社本庁」を中心とした神社神道の世界を云ひますが、この神社界では「怪力乱神を語らず」といふことが暗黙のルールとなってゐるやうな雰囲気があります。
従って霊異譚の類ひはあまり好かれません。
しかし、それもよくよく考へてみれば戦後教育世代が台頭するやうになってからのハナシであって、かつての戦中戦後の難局を突破した神社人といふのは何だかんだ云って霊異譚などを重視してゐました。
有名な葦津珍彦(あしづうづひこ)氏などを初めとしてかつての主要な神社人には、神社を唯物的合理的に解釈しようとすれば却ってその本質を損なふ、といふ考へがあったのでせう。
著者小野祖教氏もどうやらさういふ神社人の一人であったやうです。
本書の内容は神社祭祀全般にわたるものですが、下巻に「奇瑞拾遺」といふ一章を設けて様々な霊異(威)譚を紹介してをります。
ここで書くのも憚る命懸けの神事(失敗すると死んでしまふ・佐治芳彦氏の書籍で引用されてゐた)のことや、吉田神道の秘呪を唱へての壮絶な憑き物落しの詳細、果ては四国五台山の清水派神仙道本部の道士による霊夢譚まで、現在の神社界では考へられない興味深い記述ばかりです。
アンチ神道で「さかしら禅」の鈴木大拙居士と神道論争をしたことでも有名な小野祖教氏ですから相当の神道理論家だったと思はれますが、単なる口舌の徒ではなく熱心な神道家だったのでありませう。
下巻では憑き物落しについてこんなふうに云ってをります。
「そういう御祈祷は、神社にいればみんな頼まれる。ところが、祭式の方では、そういうことまで教えない。雑祭式でさえ、とり上げないものになっているが、信仰としては生きている。心得がないといけない」
現在の神社界の心ある人に是非読んで頂きたい一冊です。
オンラインからもご購入可能です。
(担当 山口ケン)
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