或る人曰く 「僕にはわかる、彼女は天女だったんだね、つまり人間界に何らかの理由で一時的に立ち寄っただけで、元来はこの世界の住人ぢゃァなかったのだよ。 理由は知らないけど、まァ天界で一寸した罪を負って一時的に人間界に流されたのか、羽衣を失くしたのか、或ひは誰れかを追ひかけて自分の意思で降りてきたのか。 そもそもあんなに急に逝ってしまふなんてヲカシイ。 あれはほんたうは死んだんぢゃなくて、帰天したといふことなんだよ。だから決して悲しくなんて思っちゃァ不可ないよ。 むしろ濁世を脱してやっと天女が天界に帰れたのだから祝ってあげるべきなんだ。 それにしても彼女の在世中に邂逅できた人の道福たるや大変なものだね、この世で天女と会へるんなんてウン万年からの勝縁なのだからね」 と妄想されてしまふくらゐの人間離れした雰囲気の山口小夜子さん(残念ながら昨年急逝されました)。彼女の哲学がエッセイ風につづられる唯一の自著です。 写真も沢山です。服飾関係者に限らず是非御一読頂きたいと思ひます。
この十年間でどれほどの喫茶店がなくなったらう。 「スカラ座」「クラシック」「純喫茶日比谷」「エリカ」「宵待草」「ボア」・・・エトセトラ。 本書に掲載されてゐる喫茶店もすでに何分の一かは鬼籍に入ってをります。 愚生個人にもそれぞれの店にそれ相応の思ひ出と思ひ入れがあり、そこにゐたカフェマヌカンの風貌なんぞを追慕しながら「あゝ過ぎた日々は二度と戻らぬのだなァ」と改めて慨嘆するのであります。 お釈迦様は「会者定離(ゑしゃぢゃうり)」と仰言てをります。すなはち「出会ったものは必ず別れる」といふことです。 出会ったり別れたりする対象は何も人だけでなく、物であったり、場所であったり。 畢竟人生の本質は「別れ」であるといふことでなんでせう。 なんだか無常感が漂ってしまひましたが、本書は沼田翁の綺麗な写真とコラム、著名人(林静一など)による対談などを収録した都内の老舗喫茶店ガイドとなってをります。 本書を活用して既に無くなってしまった店を追憶するもよし、まだ遺ってゐる店を求めて都内を散策するもよし。 いよいよ秋が近づいてまゐりました。喫茶店で珈琲を愉しみながら悠っくりと自分と向き合ふやうな時間が持てたら素敵ではありませんか。
(担当 山口ケン)
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