2007/8/14 21:00掲載
まんだらけ 中野店 3F 本店2

終戦記念日に読むべき本たち

8月6日8時15分。

広島市上空にB-29、通称エノラ・ゲイから、原子爆弾「リトルボーイ」が投下された瞬間です。 爆発の中心では熱で鉄が溶けたほどだといいます。ひとびとの皮膚は焼け爛れ、川にとびこむもそこは既に熱湯だった・・・というまさに阿鼻叫喚の有様だったと聞きます。

この3日後、長崎にも原子爆弾「ファットマン」が投下。 日本にかろうじて残っていた抗戦の意思を砕きました。 翌日にはポツダム宣言を受諾。そして8月15日・・・62年前の今日・・・昭和天皇による終戦宣言がラジオでなされ、日本の戦争は終わったのです。

僕が子供のころはまだ、徴兵、従軍した人や戦争で腕を失った人、親族を戦争で失った人がふつうにいました。 そしてその戦争をリアルに覚えている人から、教科書ではけして学べない、民衆達にとっての戦争、を教わったのです。 お盆で親戚の家に集まったときにも、当時を思い出すかのように、誰ともなく大戦の話をしていたのを覚えています。

いつのことだったか、お盆に親戚が集まったとき赤紙(召集令状)の話が出たことがありました。 当時実際に赤紙を受け取った人たちのする話は、僕らが持っている赤紙の知識とは比べ物にならないほど重く、暗いものでした。

戦後50年を越えた頃から、昭和以前に生まれた世代・・・つまり戦争を体験した世代が存在しない家庭が多くなり、口伝による戦争体験の継承は途絶え始めます。 戦争を知るには、書物やデータに頼るほかなくなってきました。歴史的事実や時系列などは書物やデータでかまわないと思うのですが、 その時代に生きた人々が感じたこと、生の声や体験は、この先データに残ることなく埋もれていくのです。
子供のころ、じいさんがする戦争の話ど辛気臭くて嫌いでしたが、今となっては耳を傾けておけばよかったとしみじみ思います。

広島と長崎における原爆体験はそれでも、多くの人の努力によって世代を超えて継承されています。そのひとつが、「はだしのゲン」。

このマンガは、マンガであるにも関わらず、多くの学校の図書館に置かれつづけました。
小学校、中学校、時には高校の図書館にも。そしてマンガだ、というだけで「はだしのゲン」に手を伸ばす少年たちに大きな衝撃を与え、そしてその凄惨極まりない描写は、心に残る小さなササクレとなって残っている人も多いでしょう。
図書館に置いてある「はだしのゲン」は、背が弓状に曲がり、糸で補修され、腹は指汚れで茶色になっていた記憶があります。それだけ多くの人が読み、触れた本。 そして多くの子ども達に戦争の悲惨さと不条理さを訴えつづけた本。戦争の実体験が家庭で継承し得ない現在でこそ、読み継がれないといけない本だと思います。
先日のドラマ版もおおむね好評でしたし、また「夕凪の街 桜の国」の映画化など、唯一の被爆国として記憶を風化させたくない・・・というムードが高まっているのは良いことだと感じます。

アジア近隣との関係が悪化し、右傾化を危惧する声もまた高くなっている昨今。
感情的になって叫ぶ前に、戦争の本当の苦しみを知らなければなりません。

図書館にあったオレンジ色汐文社版は今でも大きな書店に行けば手に入りますし、中央公論社版の文庫も入手可能です。

今回は、ヒロシマ・原爆関連の本で、8月15日に読むべき本をセレクトしてみました。

「はだしのゲン」汐文社版

汐文社版で全10巻です。図書館で誰もが手にとったあのオレンジのカバーの本で揃えました。
前述したように、未だに新刊が増刷されつづけている本です。そして図書館には必ず置いてある本です。 しかし自宅の本棚にこれがあるという人は、なかなかいないのではないでしょうか。 また、きちんと最後まで読んだという方も少ないのではないでしょうか。 たしかに大人になると、無邪気にマンガだからと読んでいた子供のころとは違い、読み通すのにある種の覚悟が必要となる本です。しかしそれは語られている事実の重さに帰結します。

ちなみに文庫版は「当時の言葉遣いでない」つまり当時リアルに(現在だと差別に当たる単語も含め)話されていたことばでは「なく」されています。 汐文社版はそういった表現も作者の意向含めそのままなのが差といえます。


「はだしのゲン」絵本版

こちらも小学校に常備されていた「はだしのゲン」の絵本。
原爆投下後の広島が無残絵さながらに描かれています。
ガラスが刺さった人、黒焦げの死体、特高の拷問や沖縄の悲劇などがこれでもかと表現され、ふだんふつうに与えられている平和という状態のありがたみを感じさせずにはいられません。ややイタミで525円。

「はだしのゲン」実写映画版パンフレット

76年に上映された実写映画版のパンフレットです。
実写映画化は数回されているはずですが、これは一番最初のもの。
西日本出身の方は、学校で見させられた記憶のある人も多いのではないでしょうか。未DVD化の本作なので、当時の記憶を遡る助けになると思います。315円。

「はだしのゲン2」パンフレット

前述したように、「はだしのゲン」を学校で見させられた世代、公民館などでみた世代はかなり長い年月に及ぶはずです。
とくに「はだしのゲン」のアニメをビデオを視聴覚室で見た・・・という世代は、ひょっとしたら10年くらい続いたので
はないでしょうか。 1の舞台から3年後、終戦後の混乱をゲンたちが生き抜く姿を描いたのが本作です。イタミありで105円。

「絵本 クロがいた夏」

汐文社の絵本で、はだしのゲンの設定違い(父親と弟が下敷きになって、本人と母親が生き残る)で、飼い猫のクロが育ててくれた恩返しをする・・・という話です。
近年アニメになったのを覚えている方も多いのでは。ピカの直後の地獄絵図は脳裏から離れません。
中沢氏は「はだしのゲン」を見た子どもたちがピカの怖さを感じ取り、それがトラウマとなって忘れられなくなれればいいと感じているとのことですが、この本を見て何も感じない人はいないでしょう。2625円。

「夕凪の街 桜の国」こうの史代

戦後多くの日本人が「ヒロシマ」そして「原爆」を意識的に避けつづけ60年たちました。
そのことに不自然さを感じた筆者・・・被爆者でも被爆2世でもない、原爆を経験していない世代が・・・もう一度自分の住む町に起こったことを振り返って描いた物語。
日々を普通に生きていた人にとっての原爆、そして放射能の恐ろしさ。淡々と描かれる日常から、突如終末に。
たった35ページの短い物語ですが、読み終わったあとの切なさはそのページ数の何倍もの量で襲ってきます。多くの人に読んでもらいたい良作です。420円。
「原爆はわたしにとって、遠い過去の悲劇で、同時に「よその家の事情」でもありました。怖いということだけ知っていればいい昔ばなしで、何よりも踏み込んではいけない領域であるとずっと思ってきた」
「原爆も戦争も経験しなくとも、それぞれの土地のそれぞれの時代の言葉で、平和について考え、伝えてゆかねばならない」
・・・こうの史代さんも、こうあとがきで触れていましたが、原爆に関してはどこかよそよそしい態度を僕らはとってきたのだと思います。そしてそれが不自然なことをしりつつも。

終戦記念日である今日は、平和を享受していることのありがたみをもう一度かみ締めるため、これらの作品に是非触れてください。

(担当 岩井)

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