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昭和45年（1970）8月31日～11月7日にかけて、澁澤龍彦は初めてのヨーロッパ旅行を経験しました。
時に澁澤42歳。若き日からその博覧強記によってヨーロッパ文化の暗部を日本へ紹介しつづけた澁澤としては、思いのほか遅い渡航ともいえます。

本書は、その経験を受けて帰国後に各所に寄せられた紀行文を中心に編まれました。
澁澤は広大なエウローペー（ヨーロッパ）を略奪することなど思いもよらぬと喩えて、その乳房を彷徨い、訪れた場所や見聞した物事を該博な知識でもって丹念に描写してゆきます。
ある種の澁澤の著作がそうであるように、自らの興味関心についての乾いた筆致の裏側に見え隠れする情念が本書にも見受けられますが、特に、初の渡欧ともあってヨーロッパに対する澁澤本人の積年の憧憬や喜悦、感動が文章の端々ににじみ出ているのが読み取れます。

【商品名】澁澤龍彦「ヨーロッパの乳房」立風書房
【発行年】昭和48年4月15日
【サイズ】173×238×32mm（外函）
【ページ数】245ページ
【備考】署名入、外函・函・スリップ付、限定200部の内第120番、定価8000円、装幀：野中ユリ
【状態】少シミ、パラフィン紙少ヤブレ

(担当藤田)