20歳、きっとそれぞれに夢を持って生きていることでしょう。
もし何もない人はバンドでも始めましょう、きっとモテますから。
と言う訳で、今日は特に夢を持たない少年がバンドを組む青春漫画「踊るミシン」を紹介します。
この漫画は、不真面目な予備校生の田村が家出をして、バンドを組もうとするところから始まります。
バンド仲間の長井や、高校時代からの友人・麗花と過ごす日々は決して強い熱を持たず、しかしそこに生まれる何気ないいくつもの出来事が、数ヶ月の短い時間をかけがえのないものに変えて行きます。
冗談、隠し事、でまかせの言葉や過度な比喩に錯覚と嘘と本音が散りばめられた日常、その会話のひとつひとつの意味を解れずともひどく素敵に残るのは、若者の時間だからなのでしょう。
過去のエピソードやいくつかの謎を織り交ぜながら物語は進み、やがてバンドメンバーを揃え、練習を繰り返し田村はなんとかライブを成功させるのでした。
…という場面で終ったなら、明るい青春ストーリーで前向きになれる読後感がありそうなのですが、実際はまるでそうはありませんでした。
ライブを終えた田村はバンドを脱退して家に帰り、予備校に通うようになるのですが、その後、主要登場人物の二人…長井と麗花が実感できない程唐突に死にます。
しかもストーリー中にちらほらと出て来た謎は謎のまま、麗花の事情は麗花しか知らず、主人公の田村はただぽつねんと残されるばかりなのでした。
自分と無関係に、予兆もなく終ってしまったことは想いに比例して長く心に纏い付きます。
その不気味な喪失感が絶妙な表情と台詞で描かれていて、それこそが踊るミシンが踊るミシンでしかない理由なのです。
家に帰り、予備校に通うようになった田村は正解だったのか?
もしも田村がバンドを続けていたなら同じ結末になっただろうか。
些細な決断と大き過ぎる正誤、考えても仕方のない後悔のループは青春時代の苦悩。
「すみれ」や「チョコレート・スフィンクス・アゲイン」と同じ空気でありながら、より爽やかに美しく悲しい物語、単行本としては2015年1月現在でも伊藤重夫の最新作。
センチメンタルな余韻は絶妙、できれば青春の真っ只中にぜひ。
余談ですが、M-1 2010で笑い飯の鳥人のネタを見た時に思い出したのは、この「踊るミシン」でした。
お求めの方は本店IIにお越し下さい。
(担当 せきロ)
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