まんだらけ中野店 4F マニア館花文庫「影姫」楳図かずお

口元に冷笑をたたえた高貴な少女というのは本当に永遠の憧れでして（個人的趣向の露呈）、
例えば？と言われるとこの「影姫」の主人公、鬼姫（奈津姫）を上げたいわけです。
楳図先生の描く少女が本当に美しいというのはもう定説なんですけども、恐怖に恐れおののくか弱い少女もいいんですけれども、
鬼姫やおろちのように強く美しい少女はなんかもうたまらんわけです（またも個人的趣向の露呈）。

非道な悪政に苦しむ美しい少女・志乃は、ある日突然城へと招かれ、視力を失ってしまった奈津姫の影として生きる事を命じられます。
我侭の限りを尽くし、蝶をその手で握りつぶし、冷たい笑みを浮かべ、鬼姫と呼ばれる奈津姫。
自分とはまるで正反対の奈津姫の影となるべく、虐めのように厳しい指導を受け、次第にしぐさが奈津姫そっくりになっていく志乃。
しかしある日君主の気まぐれから、目の前で両親を殺されてしまう志乃は復讐を誓い、
次第にその心までも鬼となっていくのですが…
というお話。志乃やその他登場人物の心情の変化の描写はさすが楳図先生。思わずのめりこんで読んでしまい、本当に手に汗握りました。
最後は鬼姫としての気品の高さを守りながら、しかしどこにでもいる少女・志乃としてのやさしい気持ちも忘れずに散ってゆくその姿には涙を禁じ得ません。
読後ジーンとしてしまうような感動があります。志乃は本当に強い少女でした。
移ろい変わりゆく人のこころ、人の醜さ、厭らしさ、また逆に人から人への愛情の深さ、といったものが見事に1本のドラマとして描かれています。少し大人向けかもしれませんね。

状態は貸本ですが、落丁や頁欠けなどはないので読む分には差し支えありません。
価格は6,825円。詳しい状態は店頭またはお電話にてどうぞ～。

(担当いわき)