栄楽つけそば 復刻プロジェクトin中野社員食堂

文:広報部中村

Episode1

昨年まんだらけ中野店社員食堂メニューを決める会議で古川会長から「栄楽のつけそばを食堂メニューで出せないか?」と提案された。

「栄楽」を知らない方に簡単に説明すると中野ブロードウェイ北口の早稲田通り沿いにあったラーメン店。名物の「和風つけそば(つけ麺)」を求め行列の絶えない中野を代表する人気店だったが店主がお亡くなりになったため惜しまれながらも2012年に閉店。まんだらけがオープンした1980年代から足繁く通っていた古川会長を筆頭にまんだらけスタッフにもファンが多く今だにあの味を懐かしむ方がいる。私も九州福岡から中野に出てきた2000年初頭「栄楽のつけそば」を初めて食べた時の衝撃を忘れられない。当時九州にはつけそばの文化がなくあそこまで醤油味が濃いパンチのあるつけ汁には出会ったことがなかった。正直味が濃すぎて特別美味しいとは思えなかったのだが何回か通ううちに癖になり最終的には週2で食べることもあるくらい「栄楽のつけそば」にハマってしまった時期もあったのだが。栄楽の味の記憶を思い出すために取り急ぎ中野「大勝軒」「青葉」新井薬師の「丸長」その他休みの日は様々な店で「つけそば」を食べ歩いてみる。どこも美味しいが栄楽のパンチの効いたつけ汁に近いものがなくあまり参考にならなかった。

栄楽のつけそばを復刻する前に職場付近のつけそばを食べ歩いてみました。

青葉 中野本店

魚介と動物系のダブルスープで一世を風靡した中野の名店。節が味が効いたつけ麺も当然美味しいが栄楽ほどの醤油や酸味の強さ癖がない。煮卵やチャーシューの量が増した特製付け麺や限定の麺も食べたが栄楽とは明らかに違う。

限定麺

特製

丸長 新井薬師前店

新井薬師駅前にある昔ながらのつけそば。つけ汁の味は濃いめでほんのり甘く昔ながらの美味しさがある。栄楽のつけ汁はもっと醤油が濃く酸味が強く甘さも違う

大勝軒中野

池袋大勝軒の伝説山岸一雄氏も修行した中野を代表する老舗。麺の太さなどは栄楽に近いがつけ汁は比べるとかなり薄味です。老舗の美味しさがある。

らあめん 満来 新宿西口

新宿を代表する名物「ざる」。さすがの美味さだが麺は栄楽のものより細い。つけ汁もオールドスクールで最高だが栄楽に比べて醤油が薄くパンチは弱い。

らぁめん ほりうち 新宿本店

同じく新宿を代表するざるラーメン。並びの満来に近いつけ汁と麺。つけ汁の量も栄楽に比べ量が倍近くある。当然味も薄くなっている。かなり美味しい一杯です。

Episode2

栄楽の「つけそば」復刻するにあたり具体的に特徴を思い出すがハッキリしない。

栄楽の復刻を会長同様に楽しみにしている「栄楽」の常連だった人事部の岩田部長に聞き込み調査開始。岩田部長曰く「栄楽のつけ汁は少ないのにあれだけの麺の量を食べさせるわけだからかなり味が濃かったと思う。特に醤油の味が濃くて甘塩っぱい。お酢も結構効いていた。唐辛子とコショーも入ってたと思う。」
岩田部長の栄楽への熱い思いはこちら
その他「栄楽のつけそば」を食べたことのあるまんだらけスタッフの意見をまとめると。

栄楽の特徴

  • つけ汁の味が他店のつけそばよりかなり濃い
  • カツオの味が効いている
  • つけ汁は酸味が強く甘味がある
  • 辛味には一味とコショーが使われている
  • 麺はもちもちツルツルで柔らかい
  • 具材は細切りのチャーシューにナルト、輪切りの長ネギ、刻み海苔、メンマ
  • 卵入りの場合は生卵が入っていた

はたして栄楽の味を再現できるのだろうか?

必要な具材&調味料のイメージ画像

Episode3

どのようにすれば「栄楽の味」を再現できるか悩んでいる間に数ヶ月が経過。まんだらけ社員食堂では「ブランド鶏」「鴨」「蛤」「煮干」など様々な食材を使ったラーメンを作りながらノウハウを蓄積させていった。技術進化の面で特に大きかったのは辻中社長がラーメン通だったおかげで八王子の名店「圓」のご主人(現在引退)田中さんを紹介していただき直接ご指導していただいた事だった。ベースの出汁の取り方、醤油だれ、鶏油の取り方、チャーシューや煮卵の作り方まで教えていただいた。だがつけ麺に関してはご教授いただいていないためどうやれば良いのかぼんやりした状態が続いた。そして今年3月古川会長から「栄楽復刻版」の進行状況を尋ねられた際に日を改めてから一度試作を作ってみようという事になった。試作当日は豚足、手羽先、鶏胸肉、長ネギ、鰹節、サバ節などを煮込みながらベースの出汁を作った。ベースの出汁に濃口醤油、昆布、みりんなどで作った醤油だれを大さじ1、2、3と増やしながら塩味を調整。そこに酢、砂糖、唐辛子、コショーを入れたつけ汁を作った。麺は近くの製麺所の直営店が売っているつけそば用のものを3種類用意してみた。麺を茹で古川会長、辻中社長、岩田部長に試食していただいたが「麺も、つけ汁も栄楽のものと違うな」という意見だった。確かにつけ汁の味の濃さや酸味、鰹節の効きかた全てが物足りないものだった。数日後古川会長から「栄楽のツユに近い味を見つけたので研究してみては」といただいたのがこの「江戸そばつゆ(無添加そばつゆ)」だった。このつゆが販売されているサイトで使われている原材料をチェックするととこう書いてあった。「濃厚な本返しを強めに使用しながらも鰹本枯れ節を利かせた本格そばつゆです」
「鰹本枯れ節!?」こんな高級素材で出汁を取ったことはない...

圓の元店主田中さん・辻中社長・広報中村

まんだらけ社員食堂に出向いていただき直接ご指導いただきました。

煮干ラーメン

まんだらけ食堂で集めれれる素材を使い
「圓」の煮干ラーメンを再現していただきました。
このラーメンを200円で食べれるまんだらけのスタッフは幸せ者です。

蛤ラーメン

食堂では田中さんに教えていただいた事をベースに
様々な食材を使ってラーメンを作ってきました。

会長からいただいたそばつゆ

会長からいただいたそばつゆ。鰹本枯れ節を利かせ
化学調味料、保存料無添加の。一人前70ml×6袋入りで価格は648円となかなかのお値段。

Episode4

取り急ぎ鰹節の生産日本一の鹿児島から通販で鰹本枯れ節を注文。500gで2,484円送料を入れると3,000円を越す高級食材だ。少し本枯れ節を使い出汁を取ってみたが確かに香と旨味が強く良いつけ汁のベースが出来そうだ。翌日本枯れ節を多めに使いつけ汁を作ってみたが栄楽の味が出来ない。何かが足りない。袋小路に入ってしまうのかと思ったその翌日辻中社長から携帯に連絡が来た。辻中社長の話によると今朝圓の元店主田中さんに連絡をして以前お店で栄楽風のつけそばを作った時の材料や分量を教えていただいたとの事。定休日自宅からわざわざ連絡していただいた辻中社長の言うことをメモした。ベースの出汁には豚ゲンコツ、鶏ガラ、そこにサバ節、鰹節、宗田節を使用。驚きだったのは鰹節よりもサバ節の分量が多い事だった。醤油だれには醤油、みりん、お酢、砂糖、細粒の唐辛子、白コショーなど。お酢と砂糖は予想よりかなり多い分量を入れる。酸っぱ甘い栄楽のあの味はこの配合で出来るのかと感心しながらペンを走らせた。その後正確な分量を思い出したと田中さんから連絡があった。独自ではたどり着くことのできなかったレシピをまんだらけ食堂のため教えていただいた田中さんには感謝の気持ちしかない。材料は揃った。いよいよ最終試作だ。

本枯節(鰹節)

特選素材の本枯節。出汁を取った時に強い鰹節の良い香りが立ち上る。
そのまま食べた味は普通の鰹節より濃縮した旨味を感じる。
この食材で出汁を取れるのは営利目的ではないまんだらけ食堂だからかもしれな い。

サバ節

まんだらけの食堂で作る味噌汁の出汁にも少しアクセントとして使用している
サバ節だが栄楽のつけそばでは結構な量を使用することが判明。
漬け汁の酸味はお酢だけでなくサバ節の酸味をプラスしたものだった。

宗田節

味の濃い出汁の骨格になるポイントの1つがこの宗田節。
三種類の節を絶妙な配合で混ぜる事により個性的な漬け汁のベースとなる。

Episode5

最終試作の実食を前に触れておかないといけない事がある。京都の生中華麺業務用卸専門「麺屋棣鄂(めんやていがく)」さんの事だ。まんだらけの食堂でラーメンを作る際には必ず相談に乗っていただいている麺のエキスパート。担当の服部さんはかなりのラーオタでこちらの要望に対しても「あそこの麺は食べた事があります。パツンパツンの感じですよね」など毎回打てば響く感じのやりとりで頼もしい味方だ。辻中社長が栄楽の試食用の麺のサンプルをお願いした時も「今流行りの麺ではない事は昔栄楽を食べた方に聞いた事があります」と3種類を送っていただいた。送っていただいた麺をA、B、Cと分けて試食したところ古川会長と岩田部長が「Cの麺が栄楽の麺に近い」と意見が一致。服部さんに送っていただいた中から「こしありつつのフニャ麺」のCタイプを使うことに決定した。古川会長から「この麺で太さが1.5倍くらいのものがあればいいのだけどな」とのご要望を受けた。辻中社長が服部さんに後日連絡したところワンサイズ太いものなら用意できるとの返事があり早速注文することにした。中野社員食堂に100玉、SAHRA食堂に55玉の麺が届くのは実食する前日に決定。

麺屋棣鄂

まんだらけ食堂でラーメンを作る場合は必ず相談する専門店。
担当の服部さんはかなりのラーメンマニアでこちらの要望にも
的確に答えてくれる頼もしい方です。

麺屋棣鄂
https://www.teigaku.com/

Episode6

最終試作のため広報部での業務は一旦ストップ。本業よりつけそば作りを優先出来るのはまんだらけの「好きなものはトコトン追求する」と言う社風のおかげである。アニメ・漫画だけでなく好きなものならジャンルは問わない。ラーメンでも真剣に取り組めば評価してくれる人がいるのは心強い。心置きなくつけそば作りに没頭できる。昼から豚ゲンコツを洗い鍋でグツグツ茹でその後、綺麗に掃除と血抜きした鶏ガラを投入して数時間煮込む。最後に本枯節、サバ節、宗田節、長ネギを入れさらに煮出せばベースになる出汁の出来上がり。だし汁を器に注ぎ田中さんに教えていただいた配合で作った醤油だれを20、30、40CCと注いだ3種類のつけ汁を作った。私の曖昧な舌の記憶でも今まで作った中では一番近い味が再現で出来たのではないかと感じた。いよいよ最終試作の実食開始。食堂に集まっていただいた会長と岩田部長は1口食べるなり「前に食べた試作のものよりかなり栄楽に近い味になっている。美味しいね」と言っていただきホット一安心。醤油だれ40CCを入れたつけ汁が一番栄楽の味に近いとの意見をいただいたが初めて味の濃いつけそばを食べるスタッフの事を考え「味のバランスが一番良い30CC醤油だれを入れたものにしましょう」と会長からGOサインをいただいた。試行錯誤すること数ヶ月ようやく栄楽のつけそばを中野とSAHRAの社員食堂で復活させる事が出来る。長かった。

Episode7

翌日の夜、試作したつけそばレシピの書き起こしを行っていると同じフロアで仕事をされていた古川会長から「昨日もう一度あのつけ汁で麺を食べてみたけど40CCの醤油だれを入れたものに変更しましょう。塩分の取りすぎは良くないんだけど味が濃いのが栄楽だから仕方ないよなw」と言われた。その流れで会長に栄楽の思い出をお聞きした。会長のお話によると1980年中野ブロードウェイビル2階に店を構えた数年後には栄楽に通っていたとの事。栄楽の親父さんは頑固な面もあったが会長のお願いは良く聞いてくれたらしい。ある日思いつきで茹でた麺を「熱々のまま食べたい」と注文すると「はい」とすぐに出してくれた。「あつもり」自体まだ一般的ではなかった時代だがどうしても熱い麺でつけそばを食べたくなったとの事。「栄楽のあつもりはどうでしたか?」興味津々で会長にお尋ねすると「普通のつけそばの方が美味しかったね」とあっさりした返事が。その他にも栄楽の親父さんの御子息がかなりの漫画コレクターでまんだらけの買取に状態の良い本をたくさん持ってきていただいたそうだ。「かなりのマニアだったと思うよ。本当にたくさん漫画本を持っていたんだよね。お陰様でうちも儲けさせてもらったよw」まんだらけでのやり取りもあり会長は栄楽の方に顔を覚えていただき良い関係を築けたそうだ。「海外の仕事から日本に帰ってくる時、無性に栄楽のつけそばが食べたくなるんですよ。空港から中野に戻ってくると真っ先に栄楽に行ってつけそばを食べたなぁ。醤油と出汁の効いた味は海外ではないからね。中毒だよwでも本当に美味しかった」腕を組んで懐かしそうに語っていただいた。その時、栄楽に対する会長の思いは自分が考えていた何倍も強いものである事が理解できた。本番は気合いを入れて古川会長、岩田部長が満足していただける栄楽の味に近づきたい。

醤油だれの材料

醤油

栄楽の濃厚な醤油だれを再現するためメインの醤油は
再仕込醤油を使用することに決定。
コクもあり旨味も強いためパンチのある漬け汁のベースとなる。

昆布水

醤油だれ、ラーメンのスープ作り様々な場面で重宝する昆布水。
旨味のベースが一段階上がる隠し味です。

醤油だれ

醤油、みりん、砂糖、酒などの材料を使い数日寝かせた醤油だれ。
つけそばを食べる当日にお酢、粉唐辛子、白コショーなどを加え味を調えます。

最終試作の漬け汁

醤油だれ20、30、40CCと注いだ3種類のつけ汁。
食べる直前に刻みチャーシューとネギを入れました。
40CCの最も醤油味が濃いものが一番栄楽の味に近いと
意見が一致しました。

Episode8

いよいよ明日食堂で「つけそば」を提供する。前日から仕込みで大忙し。
広報業務の合間に仕込みでなく「つけそば」の仕込みの間に広報業務という感じで1日中バタバタしている。まずはベースのスープを取るために使う豚ゲンコツ と鶏ガラの掃除。特に鶏ガラについた内臓や血合いなど雑味になる要素は1つ1つ丁寧に取り除きながら洗い流す。骨をボールに入れ水を注ぎ少し時間をおいて血抜きが済んだら15リットルの水をはった寸胴にゲンコツだけを投入。数時間強火で煮出す。その後鶏ガラと長ネギをプラスしてさらに数時間中火で煮込みベースのスープが出来上がり。骨が溶け白濁するくらいグツグツに煮出すのがポイント。明日はこのスープに節(サバ節、宗田節、鰹節)を入れて香をつける。節を前日入れるとせっかくの魚介の香が落ちてしまうので煮出すタイミングも大切。
その他チャーシューの仕込みや具材や麺など材料の確認をして作業終了。今日出来ることは全てやっておく。食堂でラーメン作りを行ってきた事でラーメン屋さんがいかに大変な仕事なのか強く実感。今まま以上に感謝の気持ちを持ってラーメンをいただくようになった。いよいよ明日は栄楽復刻の本番だ。

ゲンコツ&ガラ

豚ゲンコツと鶏ガラ。丁寧に掃除と血抜きは基本。
試作では丸鶏、豚足やもみじなども使ったが
今のつけ麺でなくあくまで「栄楽のつけそば」の復刻ということで
とろみや鶏の香りは抑えようということでシンプルな材料にした。

スープ

ゲンコツを入れて強火で数時間、鶏ガラと長ネギを入れて
さらに数時間中火で煮込む。画像よりもさらに白濁したらベースの
スープが出来あがり。肉や鶏油などを入れないのは
明日入れる節の香りと醤油を引き立たせるため。
昔ながらのシンプルな中華スープを目指す。

明日はベースのスープに
サバ節を中心に、宗田節、鰹節(本枯節)を大量に投入。
栄楽の特徴的な酸味のあるつけだれは節の香りが大切な要素となる。
本枯節を使っていたとは思えないがw

Episode9

いよいよ「栄楽のつけそば復刻」当日の日。仕込み作業が多いため少し早めの出社。
昨日煮込んだベースのスープに火をかけ沸騰したところで大量の節を投入。すぐさま鰹節の良い香りが立ち上る。食堂スタッフには麺の仕分け、チャーシューの細切り、ネギの輪切り、ナルトのカット、メンマの塩抜きと味付け、デザートのメロンの準備など細々とした作業をお願いした。スープの仕上げに集中したいので本当に助かります。スープを煮込んでいる間にベースを作っていた醤油だれにお酢と一味、白コショーを足す。事前にお酢を入れておく事もできるが栄楽の特徴である酸味が飛ばないように投入のタイミングには細心の注意を払った。節を入れて2時間ほど煮出すと白濁したスープは黄色味が濃くなりつけそばのベースがようやく出来上がり。ゲンコツの投入から約8時間ラーメンのスープは本当に手間がかかる。ほぼ毎日スープを仕込むラーメン屋さんは本当に凄い労力だと実感。
出来上がったスープを味見したが鰹節の香と旨味が少し足りないので節をさらに投入する。化学調味料を使わずに旨味をしっかりと出すのは本当に大変だ。そこを理解してもらいたい気持ちもあるが食べるスタッフには何の関係もない。要は旨いか旨くないかだけ。ギリギリまでスープの調整を行い最終試食。麺を茹で、醤油だれを入れたお椀に具材を投入しスープを注ぐ。茹で上がった麺を水で丁寧にぬめりを落として氷水で締める。よく水を切り皿に盛り付け実食。お椀に麺を入れ一口。しっかりとした節の香りと酸味と甘味が口の中に広がる。「よし!美味しい」完璧に栄楽を再現できたとは言えないがこれまで作った中では一番の再現度だ。

スープ

豚ゲンコツ、鶏ガラを長時間煮込んだものにサバ節、宗田節、鰹節(本枯節)を
大量に投入しさらに2時間煮込む。
丁寧に漉せば黄金色に輝くベースのスープが出来上がり。
食べた瞬間鰹節の香りが口の中で広がるのが理想だ。

麺屋棣鄂さんから送ってもらった麺を大盛り、普通、小盛りと分ける。
中野食堂では70人以上の注文があったが大盛りは20名以上と
通常のメニューに比べてかなり多い。期待の現われだと感じている。

具材

チャーシュー細切り、ネギ、ナルト。ここには写ってないが卵つけそばを
希望される方に生卵も用意した。自分が食べていた頃の栄楽ではナルトは
細切りだったが(ナルトそのままの画像もあるが詳細は不明)
そのままの方が見栄えが良いので切らないことにした。

Episode10

1日食堂作業に専念するため一度事務所に戻りメールなどをチェックしていると会長から「今日はいよいよ栄楽だね。何時に食べられます?12時くらいだとありがたいんだが」と質問を受けた。食堂オープンの13時に合わせ準備していたがスープも問題なかったので「12時から大丈夫です」とお答えした。すぐに食堂に戻り会長のつけそばの用意。麺を茹でている間に醤油だれに具材を入れスープを注ぐ。6分後茹で上がった麺を洗い氷水で冷やして皿に盛る。1つ1つ丁寧に作業することを心がけ「栄楽復刻版第1号」が出来上がった。会長をお呼びして「つけそば」が乗ったお盆をお渡しする。「じゃあ食べてきます」会長の後ろ姿を見送った。はたして栄楽の常連客だった会長が満足されるのか?不安が脳裏をよぎる。10分くらいして食堂に戻られた会長が「めちゃくちゃ美味しかったよ!プロの味だね。これで商売出来るよ。感動した!」満面の笑みで感謝の言葉をいただいた。私は料理人ではないが作った物を「美味しい」と言ってもらう事に喜びを感じる。つけ汁のお椀を持った会長が「スープ割はできる?」との問いに「もちろんです」と即答。「皆んな喜ぶと思うよ。今日は頑張ってください」会長からの激励に気合が入る。鰹節の香りが飛ばないように少人数分のスープを鍋に移しながら温め、醤油だれに40CCのレードルをセット。チャーシュー、ネギ、ナルト、刻み海苔などの具材を入れやすいように並べ準備は整った。13時食堂がオープンするとスタッフが続々とやってきた。大半のスタッフは栄楽の味を知らないのでつけ汁と具材の特徴や食べ方などレクチャーしながら「つけそば」のお盆を渡した。「食堂を利用される方にお知らせです♪今日のつけそばは、食べた後のスープ割が絶品です。必ず注文しましょう!」食堂部の福元部長の館内放送に思わず笑みがこぼれる。まんだらけの特に女性スタッフは「つけそば」初心者が多く放送された「スープ割」の意味がわからず度々質問を受けた。卵つけそば用に用意した生卵で卵かけご飯を食べる者やスープ割をオカズにどんぶり飯を食べているわんぱくな姿も。そんな初々しいお客様を横目で見ながら真剣に調理を行った。14時岩田部長から「今日は15時に行きます。栄楽リスペクトと言うことで」人気店「栄楽」の行列を回避するため閉店時間ギリギリに行っていた同じ時間帯で「つけそば」を食べたいと願う栄楽愛溢れる内線電話だった。ほぼ満席となり給仕でバタバタしていた食堂スタッフに内線の内容を伝えると「岩田部長らしいですね」と苦笑いしていた。15時ジャスト宣言どおり岩田部長が食堂に来て「大盛お願いします」と食券を渡してきた。ご期待に応えるため麺は大盛の1.5倍「特盛り」、チャーシューもお碗パンパンに入れ「つけそば特大チャーシュー」を再現。辛口が苦手なスタッフが多いため抑え気味にした一味とコショー、酢をプラスすればさらに栄楽に近い味になりますと説明してお盆を渡した。岩田部長は刻み海苔3回とチャーシューとネギを2回、醤油だれを少しおかわりしてからの割スープまでしっかり完食していただいた。完璧な復刻版でない事はわかっているが復刻版を楽しんでいただき一安心。16時スープの香りが薄くなってきたので追い節を投入。その後も休みなく作り続ける。17時過ぎまんだらけで勤続年数30年を超える重鎮スタッフ今入&深田さんのコンビが登場。当然両人とも栄楽に通っていたので意見を聞く。今入さんからは麺が違う事と生卵はウズラ(私は鶏生卵時代しか知らないので確証が持てないが)だったとの意見が。さらに会長が「熱もり」を注文されていた姿を目撃したと貴重な証言もいただいた。深田さんからは小声で「中々良かったですよ」と言われて嬉しかった。その後今入さん経由で「深田さんが毎月食べたいと言ってます」とアンコールのご要望もいただいた。食堂ラストオーダーの18時半まで約80人分の「栄楽復刻版つけそば」を気持ち入れて作った。麺やスープ、醤油だれ、具材、食材全てに改善の余地もあるが今後の宿題という事で今回は満足しよう。圓の元店主田中さん、麺屋棣鄂(めんやていがく)の服部さん、古川会長、辻中社長、岩田部長、食堂スタッフ様々な方の協力を受け「栄楽つけそば復刻project」は終了。ありがとうございました。

つけそば定食

これが「栄楽つけそば復刻版定食」
副菜はメンマ、生卵、デザートはメロン。
これが200円で食べられるまんだらけ食堂恐るべし。

01
麺屋棣鄂(めんやていがく)に送っていただいた麺。
湯で時間は6分。やや柔らかいと感じるがそこが栄楽の麺の特徴に似ている。

02
茹で上がった麺を水で流しながら手洗いでぬめりを取る。
氷水で閉めてからよく水を切る。
冬場につけめんを作る場合は寒さとの戦いになる。

03
見た目は栄楽の麺とはかなり違うがフニャとした食感やのど越しはかなり近い。完璧な復刻版を作るためにはさらに栄楽の麺に近いものを探さないといけない。
まだまだ探求の旅は続く。

つけ汁

再仕込醤油、お酢、砂糖をメインにした醤油だれに鰹節の効いた中華スープを注ぐと香りが立ち上がる。
具材は細切りチャーシュー、輪切りのネギ、刻み海苔、ナルト、お好みで生卵。
見た目も味もかなり栄楽に近い

調味料

辛さや酸っぱさが苦手のスタッフが多いためベースの醤油だれには唐辛子やお酢は抑えめに配合。パンチのある味を求める本格派用にお酢、一味、白コショウをセルフで用意した。

岩田部長

この日を誰よりも楽しみにしていた岩田部長。
麺は特盛(栄楽の特盛はもっと麺が多い)チャーシュー&刻み海苔増量
これが岩田部長特製カスタムの「つけそば」だ!!

お客さん

栄楽の味を知る者、知らない者、ラーメン通に初心者、
外国人、コスプレ、新人、ベテラン、会長、社長、部長。
まんだらけ中野店の従業員約80人。食堂は1日中にぎわいました。