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「漫画少年」と私(1)
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幻の雑誌といわれている『漫画少年』が全冊揃ったので、このあたりで『漫画少年』にまつわる思い出をひもといて見ようという気持ちになった。
新潟県刈羽郡西中通村(現在の柏崎市)で昭和十二年、夏も終わりの八月末に生まれた。
昭和二十年八月、国民学校二年生で終戦。昭和二十三年、小学校五年生の一月、町(当時柏崎市のことをそう呼んでいた)に出かけ、初めて『漫画少年』創刊号を買った。
本屋には、創刊号の表紙と同じように印刷してある少年少女たちの笑い顔のビラが、宣伝のために吊りさげられていた。
十二月三十一日の夜にお年玉を貰い、一月二日には毎年、町に出るのが習慣だった。
新年一月二日は各店で初売出しをやっていて、雪があったが子供にとっては毎年待ち遠しい一日だった。
「ハローマンガ」も初売りだしの日に買ったことがある。
『漫画少年』も「ハローマンガ」も薄手の造りだったが、貸し借りや回し読みで大変よく読まれた。
そのようなわけからか、当時買ったものはいつの間にか散逸してしまい、現在手持ちの『漫少』創刊号などは、古書収集を始めてから手に入れたものである。
『漫画少年』の印象は、創刊号の表紙に代表されるように、なんといっても明るさだった。
特に井上一雄の「バット君」が明るさの代表格で、友達の間でも大評判だった。
単行本の「バット君」が発売されると急いで買い求めようとしたが、友達に先を越されていた。
その後単行本を交換したりして、その「バット君」は現在私の手もとに残っている。
漫画は子供の心を明るくし、野球は子供をよくする。子供が好んだ「バット君」は漫画と野球の両方を兼ね備えていたわけである。
漫画を愛し野球の好きな少年に不良はいなかった。悪い子供は育たなかった。
小学校五年生位では、毎月雑誌を買えるほどの小遣いは貰えなかった。
それ故、二十三年の『漫画少年』は創刊号以外は買えなかったので、近所の年上の人から時折借りて見せてもらった。
昭和二十四年になり、新年号は友人から見せてもらった。
しかし、「バット君」はやはり強烈に印象に残っていて、最後にサインボールをノックする場面を特によく覚えている。
そのほか、島田啓三の「だんご仙人」、原一司「カンラカラ兵衛」、山川惣冶の「銀星」など、二十四年発売の号は、比較的よく記憶している。
前述したように、当時の日本中の小・中学生は野球、特にプロ野球が好きだった。私も同じだった。
月刊誌「野球少年」が発売されていて、友人から毎月借りて読んだ。
昭和二十四年から阪神タイガースのファンになり、特に別当選手が大好きだった。
私は今も大変な虎キチである。『漫画少年』を読み、野球をしながら田舎の自然の中で育った。
また、昭和二十四年の『漫画少年』では、斉藤五百枝の描く表紙絵にも魅了され、新年号、五月号、七月号と鮮明に記憶に残っている。
昭和二十四年の2月号だけはバックナンバーがずっと欠けたままで、最近ようやく手に入れることが出来た。
まんだらけに大変感謝している次第で、印象深い一冊である。
昭和二十五年四月から中学一年生になり、『漫画少年』や他の雑誌も大いに読むことが出来た。
そして下手な投稿漫画にうつつを抜かす時代に入っていく。
最も充実した、そして多感な時代だったと思う。
「少年画報」「冒険活劇文庫」「冒険王」「おもしろブック」「漫画と読み物」「譚海」「探偵王」「少年クラブ」など、友人の誰かが持っていて、学校で貸し借りをした懐かしい時代である。
まんだらけ目録7号より
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S22.12.30 1月号
日本を担っていく子ども達に、夢と希望を与えたのは、野球と漫画。
野球は夢をのせたホームラン、漫画は何てったって「漫画少年」。
「バット君」(井上一雄)が創刊号の代表作である。
貧しさに負けず、失敗にめげずにがんばる「バット君」。
明るく正しく生きる姿に子ども達は自分をダブらせ、拍手を送った。
「バット君」は戦後のスポーツ漫画の原点となる。
投稿漫画募集の記事あり。
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S23.01.20 2月号
創刊2号では新連載の「銀星」(山川惣冶)に注目したい。数々のレースを通し、悪を懲らしめていく絵物語。
野生の栗毛の小馬の額には白い点があり、星のように美しく輝いている。カーボーイ達は小馬を「銀星」と呼んだ。
長谷川町子の「サザエさん」もスタートしている。
創刊号から続いている「原始のゲン吉」(島田啓三)も痛快である。
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S23.02.20 3月号
バット君はバットがなかなか手に入らない。しかし、川上選手のホームラン数を当てて、遂にサイン入り赤バットをゲットする。
その喜びを日記に次のように記している。
ああわが悲しきガラスのバットはよろこびの赤バットとなりぬ。川上選手より受けし時、われよろこびにふるえたり。
赤バット、赤バット、われこれにて大ホームランを打たん。
3月号から新しく「読者らん」を設け、投稿漫画を掲載している。
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S23.03.20 4月号
「初旅坊ちゃん」(吉川英治)の連載小説が始まる。
「少年漫画詩」(田河水泡)も興味深い。
「銀星」は西部劇の映画のような展開で次号が待たれる。
雑誌に発表された漫画は記念のメダルが貰える。これまでは万年筆だった。
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S23.04.20 5月号
「銀星」は吹きまくるあらしにたてがみと尾を高くなびかせてオーカミのむれを見おろした。
それは一幅の名画のような場面であった。突然銀星は野生馬の群れをひきいて眞一文字に丘をかけくだった。
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S23.05.20 6月号
バット君はお使いの途中で、電車のパス券を拾う。
K大の石中投手のものでひょんなことから、ボールを打たせてもらうことになる。
それも、もし打てたら石中投手が逆立ちしてグラウンドを一周する約束である。
「カンラ・カラ兵衛」(原一司)が新連載。長い戦のあと、愛児カラ助のゆくえを訪ねてカラ兵衛は旅に出る。 刀は差しているが抜かない。
犬が大の苦手。明朗な痛快漫画である。
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S23.06.20 7月号
名馬「銀星」を捕まえようと、カーボーイ達は命をかけておいまわすが、姿を見ることさえ容易なことではない・・・・・。
「バット君」が単行本になって学童社より発行。
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S23.07.20 8月号
自転車練習中のバット君が引き起こす失敗と頑固じいさんの話、さあどうなることか。
「銀星」が遂につかまる!今後はどんな展開が待っているのか。
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S23.08.20 9月号
「バット君」が東京三越デパートで開かれた優良漫画の展示会で第一位になる。
「銀星」は悪者のマニエルが乗りこなそうとするが、猛然と跳ね上がり暴れ回る。
怒り狂った銀星、大きな目から怒りの涙を流し、口から血のあわをふく。
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S23.09.20 10月号
悪者達の手から逃れることの出来た「銀星」、なぜ逃れられたのか。
野生の馬と人間が一つになった美しい光景。感動のシーンが展開される。
しかし、「銀星」には二千ドルの賞金がかけられることになる。
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