トリコロ原理主義という病

世の中には「トリコロ原理主義者」という存在がいるそうです。
「トリコロ」とは、海藍(はいらん)による四コマ漫画のこと。

症例としては
「トリコロが続いていれば......」
「トリコロがアニメ化されていれば......」
とたまに思い出したかのように呟くことなどが挙げられます。

さて。
萌え四コマというジャンルを語るにおいて外せないタイトルとして、あずまきよひこ「あずまんが大王」と蒼樹うめ「ひだまりスケッチ」があります。

「あずまんが大王」は、いわゆる「萌え四コマ」というスタイルを確立したといわれており、「ひだまりスケッチ」は「萌え四コマ」のメディアミックス展開に先鞭をつけました。

あとは社会的現象にもなった大ブームも記憶している人は多いでしょう、かきふらい「けいおん!」を加えて、萌え四コマ三大天と言っていいでしょう。
(※あくまで個人的な感想です)

その「萌え四コマ」黎明期に、「あずまんが大王」(1999~2002年)と「ひだまりスケッチ」(2004年~)の狭間において、半ば忘れられた重要な作品、それが海藍「トリコロ」(2002年~)です。
 
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萌え四コマのジャンルにおいてのエポックメイキングとして「まんがタイムきらら」(以下、「きらら」)という萌え四コマ専門誌の創刊があります。
「トリコロ」はその「きらら」の創刊からの連載作品で、初期の「きらら」の表紙の多くを担当するなど、萌え四コマの地位確立期に雑誌のメインとなった作品です。

高校2年の七瀬八重と、彼女の家へ下宿に来た同学年の2人との同居生活を、高校生活を絡めて描いた日常系四コマ漫画です。
 
「あずまんが大王」からの流れを受けて、
 
・女子高生数人による同居生活
・日常もの
・百合要素
・男はモブ

といった、所謂「萌え四コマフォーマット」を確立していきます。
 
萌え四コマ黎明期ということもあるのでしょう。
「トリコロ」は日常系四コマを目指しつつも、従来の四コマである「起承転結」、つまり四コマ目のオチをきちんと作ろうとする意図が明確に見受けられます。
 
そのオチは切れ味が鋭く、中には鋭すぎて読んだ読者が笑いの意図を汲みかねることもたびたび。
四コマ目を読んで、柱のタイトルを見直して、ようやく「あぁ」と納得することも多い。

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※誰が絵を描くのが一番上手いか(下手か)を競う話。画像だとちょっと見難いですが、表札の四女が三人になっています。
 
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※蜘蛛の巣の話
 
ギャグとして採用されていた表現が、いつの間にか作中では現実の出来事となっているといったファンタジックなオチも次第に多様されていきます。
 
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「高価なものにハイエナのように反応するという表現で獣耳が生える」

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「獣耳が生えるのを見て、高価なものだと判断する」
 
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「キラキラした表現として髪を風になびかせる」

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「風を操ることを、本人も自覚しているかのような表現」
 
あと、ところどころ発想がおかしい。
 
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「紙が多い」→「ヤギ屋?」
 
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「甘いもの」とは?
 
テンポのいい掛け合いと相俟って、日常系ながら没個性になることのない魅力があります。
 
ただ、この作品がファン泣かせなのは作品外での「やんちゃっぷり」です。
 
まず、「きらら」連載の後半から休載が多くなり、最終的に連載途中で雑誌を「電撃大王」へと移籍していまします。
ですので、3冊目にあたる「トリコロMW1056」は芳文社ではなくメディアワークスから出ています。
また、「きらら」連載分で2巻に収録されなかった分は「トリコロMW1056」の特装版についていた冊子(といってもこっちのほうが分厚い)「稀刊ツエルブ」に収録(ただし全部ではない)。

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さらに移籍先の「電撃大王」でも休載しがちになったあと、まさかの同作者の別作品「特ダネ三面キャプチャーズ」の連載が代わりに始まり、「トリコロ」は不定期連載に、という告知。
ところが、その「特ダネ三面キャプチャーズ」もすぐに作者急病を理由に掲載されなくなり、今に至ります......
 
そう、まだ終わっていないのです!
たまに全3巻とかでセット本組まれているの見るけれど、終わってないから!
続き、楽しみに待ってますから!
 
そんなわけで、現在も一定数いる
「トリコロが安定して続いていたら......」
という恨み節を持つ「トリコロ原理主義者」からの、まだまだ続き待ってますよ、という意図を込めての作品紹介でした。
 
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グランドカオス 山本

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