岩井の本棚 そらで描く 第2回

「まいっちんぐマチコ先生」

こういう「見ないで書く」のがテーマのものは、どうしても絵心の有る無しに話が及びがちですが、
興味があるのは絵心よりも「どう覚えていたのか」です。
これをこう覚えていたんだ、と。

「そらで描く」第2回のお題は、まいっちんぐマチコ先生です。

今回は「決めポーズの再現」がテーマです。

マンガにおいては「サルまん」でも触れてたように、子どもの人気を得るには決めポーズが必須ですからね。
マチコ先生も「う〜んまいっちんぐ」のポーズが広く知れ渡ってます。

そう、まいっちんぐマチコ先生、といえばウインク、胸おさえて腕クロス、
パンチラ、そしてカタカナのレみたいに足をクイッと上げたお決まりのポーズ。
どこをとってもセクシー記号に溢れているわけですが、しかしそれを絵で描くには抵抗があるのではないか。

たとえばトイレに描かれたラクガキ、猥画を見ると、普段からエロい絵を描いてる人と、
リビドーに任せてエロ絵をつい描いてしまった人、って区別つきますよね。

トイレ派はゲーセンとかのノートに描いてる奴の数倍もヘタだし、
あろうことか局部だけ描くようなワイルドなヒトもいる。しかも劇画タッチで。変態です。
トイレだから許されるのであって、ゲーセンのノートに局部だけ描いてあったら大問題ですよ。ただの荒らしです。
今回は男性スタッフ中心に描いてもらいましたが、まいっちんぐマチコ先生を描いてもらうことで、
セクシー描写に対しての処し方、許容量、というのが見えたような気がします。

決めポーズ以前の人たち(セクシー自律防御派)

つまり「顔しか思い出せなかった」のか、「恥ずかしくて全身像がかけなかった」人たちです。


この顔だけ派の人たちは、まいっちんぐポーズを描かずして再現しようとするため再現力が高くない。
顔で表現できるマチコ先生のポイントはウインクのみ。
でもこんな小娘ってことはないでしょう。セクシー度ゼロ、雰囲気的には市川ヒロシ「二人ぐらし」の嫁さんです。


フツーにかわいい女の子の絵ですね。しかしマチコ先生ではない。これは髪の毛の処理が今風だからでしょうか。
どっちかというとこんなオールドネタではなく、らき☆すたのこなたを描け、とか言われたらシャシャシャと速攻描いてくれそうです。
しかし「女子を描くスキルはあるけれど、セクシーに関しては、この場では描かない」派、
つまり大人の余裕がある。後半戦はこの大人の余裕のない人が大量に出てきますので期待してください。

決めポーズ以前の人たち(セクシー否定派)


描いてるうちに髪形がおかしい事には気がついた。でもリボンてことはないだろ。
リボンを書いたあとうしろの髪を描いたところ、赤塚キャラぽくなった。
そこで文字で「バカボンのママ」と記し、そういえばセクシーだったっけな・・・と思い出して谷間を付け加えた・・・。
そこまでは分かるのだがなぜスカートは絵で描かず「ミニスカ」などと文字で済まそうとするのか。
本来描かれるべき部分にそこだけ文字で描くというのは手法としてイイですね。
これは谷間を描いたときに「ヤベ、一線越えた」と気がついたからでしょう。
今までの生涯で胸の谷間を描いたことはないので、描いてみたらなんだかねころがった女の人の胸みたいになってしまい、
逆に妙にイヤらしくなったので、あわてて「ミニスカ」と字で防御したと。


マチコ先生の圧縮も出来ており、雰囲気は出ているものの、女の子をかわいく描くスキルが心もとない。
頭の丸い感じとかウインクとか似てるんですけどね。
ただ、絵でセクシーを表現しようという「ちから」には否定的なものを感じる。
わりと頑なというか。僕よりも年上の方が描いた絵のような気がします。
だって人間の顔描くときにまず十の字描いてアタリつけるなんて、今のヒトしないよ。


これもセクシー否定派ですね。頭から生えている花がその象徴です。
テレ隠し以外の何者でもありません。順序的には顔を描いた後、花を描いたハズです。
もしくは描いた後、なんとなくだれか知り合いの顔に似ているのに気がついてしまったので、ゴマかすために花をつけたのかもです。
どちらにせよこのマチコ先生は牛乳を一日に2リットルくらい飲むし、濡れた足でフローリングの床をベタベタ歩き回ってぜんぜん平気な感じがします。


これは僕の上司が描いたものですが、髪形も唇も、セクシーを表現しようという意思ゼロです。
むしろあんなんはセクシーといえねえよ、てなもんです。おまえバカだいたいセクシーってのはな・・・とかいいながら描いた感じです。
まん丸の目玉、とがった唇。全体的に日本人ぽくないですね。デイジーとかスーザンとか、そんな名前だと思う。
日曜日に教会にいって、ホームパーティやりそうですね。でクラッカーの上にチーズとか載せるし、ポテトもジャカジャカ揚げる。
ホットドッグ屋においてあるような、巨大なマスタード入れが家にありますね。
とある人に見せたら
「これは水木の「忍法屁話」にでてきた、ねずみ男に財産を全部取られる子供の顔ですね」


といわれましたが、たとえがあまりに一般的でないので、あっているのかどうか分かりません。
ただ分からないのは、忍法屁話にデイジーもマチコ先生も出てなかったハズなのですが。

「セクシーなんてそんな。そんなつもりぜんぜんないですよ」派

「この野郎、セクシーじゃねえか」などと言質をとられそうなところを徹底的にカットしていく手法でマチコ先生を描くという、
どうも大きな矛盾を含む作風です。パンチラも胸上げもイヤーンポーズもだからカット。ウインクもカット。
毛先がはねてたりするのもダメ、むしろセクシーじゃなくするんだったらパーマでもぜんぜん可。するとこうなります。


ああ、もっさりですね。おばさんパーマです。おかあさんだ。もはやセクシーを主張しようという気がない。
ていうか主張されたら周囲が怒るか凍えるかどちらかです。おかあさんが急にセクシーを主張しても、子供は悩むだけですからね。
年齢は53歳。まいっちんぐと言え、と指示しても、恥ずかしげに「うーん、・・・まいっちゃう」などと勝手に語尾変換してゴマかすと思う。

顔だけ派の完成系


見れば分かるように、ほぼ正解です。模範解答例。
目がカマボコ型、毛先が内ハネ、口が三角。ちょっと三白眼すぎだけれどそれくらいですね。
個人的によく知っている方に描いてもらったのですが、こんなに女の子の絵を描くのが上手だなんて知らなかった。ショックです。
女性を賛美するあまり小屋に通ってステージ上の姫にタンバリンを鳴らしまくって声援を送るような御仁だから仕方が無いのかもしれんが、酷な事実です。 だけどこれはどうも「一回でもマチコ先生を描いたことがある」人の絵のような気がする。だとしたらなに目的で描いたのでしょうか。不穏な空気を感じますね。

決めポーズ派


「パンツみえてんのに、意外とまんざらでもなかったような気がする」との記憶からアプローチした結果、
30代の事務スタッフが昼休みに屋上でバレーボールを楽しんでいるようにしか見えなくなってしまったパターンです。
手がレシーブをしてるカンジですね。ポーズはアリなのに、毛先がチリチリしてるのがマチコ先生ぽくないのかな。


いや〜んとはいってみても、服がスモッグみたいだし、クツが上履きなので、幼稚園児にしか見えません。
このいやーんで萌えたヒトは、毎月21日にいそいそとたかみち表紙の雑誌を買いに書店に赴く人です。
そのわりに膝を合わせて股を閉じるなど男の誘いっぷりは堂に入っています。
末恐ろしいですね。

なにが「まいっちんぐ」なのか失念系


今回描いてもらった中で最も「手を出したら問題」感があるマチコ先生です。
即手錠ガチャリです。つくしを採ったりトンボを追いかけるのに夢中で、とても教職なんか取れそうにないですね。
足のあげかたの問題で踊っているように見えたものが多いのですが、それでもおっぱいは隠してる・・・というのは皆抑えてました。
ですがこの子手バンザイしててご開帳状態です。ポーズの意図とセリフの関連性ナシ、もう何についてまいってるのかも忘れ去られてますね。
スカートやボインタッチをされて「まいっちんぐ」なのです。だから胸を隠してスカートを足で抑えてるんですよ。


「隠さない」で思い出したのがこれです。
これを描いてくれたのは本店の竹下さんですが、前回のスネママのときと同様で真正面からなのはよいとして、
もう全てまるだし、スカートの処理とか最高ですね。それは何にも隠せてないよ。あと髪形がジャイアントロボみたいです。
ヤングアニマルの「セスタス」にこんな女キャラいたような気がする。
「押忍!」といいそげな全身の力み具合、胸もおっぱいじゃなくて胸筋に見える。
セクシーなポーズをとってくれそうな気配ゼロ、立ちはだかっているというより寝そべってマグロです。
性的さ全排除。攻める気がない。ていうか生徒もこんな仁王立ちマチコ先生だったらスカートめくらんとおもうな。めくるまでもなく丸出しだし。


何についてまいってるのかを考慮しない系だとこれもですが、これはコロンビア系のダメ売春婦ですね。
「オニイサン、アソビドウ?」などといって近づいてきそうです。
胸をこんなに押し上げて、もう武器見せる気マンマンじゃないですか。
胸の描き方が卑猥ですね。手のひらでギュとつかむこと前提の描き方です。
そもそも首周辺にラインがないということはすっぱだかなのでしょうか。それともタートルネックなのでしょうか。
あとスカートのすそが何でこんな突っ張ってるのか。パニエでもつけてんでしょうか。
いずれにせよ斬新過ぎる組み合わせです。隠すのではなく攻めの姿勢すぎ。
先生がこんな調子では、生徒たちも「絵スカートめくるくらいじゃ物足りなく感じまいか」と気を使いそうです。


怖い。怖すぎます。これではユーレイです。
アル中の人は小人の幻覚を見る・・・とよく言いますが、たぶんその小人はこんなだと想像できます。
胸も尻も服すら描くこと拒否、そのせいで顔から下は胴体というより十得ナイフみたいです。
足が折れてる点以外、すべてにおいてまいっちんぐじゃない。
こんな白っちゃけた結び糸コンニャクみたいな貧相な身体だったら、生徒だって気の毒すぎてタッチなんかしないよ。
髪が伸びる呪い人形みたいな髪型も怖さアップです。それに比べると・・・


これを描いてくれた人は第一次オタクといわれる年代層で、
ウルトラマンとか仮面ライダーを再放送ではなくリアルタイムで見て育った世代。
僕より一回り以上年齢で上です。
それでいてこの記憶力と把握力。細かいところはハズしててもやはりこの年代のオタクの濃さ、底力を見せられた気がしますね。
放映してるアニメは全部見る、って生活をずーっとやってきた濃さというか。藤子F先生の好みそうな髪形もグーです。
まぁうちの会社だからアリだけど、世間的には重鎮クラスの年齢の人(当然あなたの父親レベル)が美少女キャラ悩まずにすらすら描いたらホントはダメなんじゃないのか・・・という微妙な思いもさせられます。

根本がエロい人たち


こんな先生きたらお前、さわらないと損、くらいの煽りかたじゃないですか。
よく見えるように腕を膝に添えてるし、こんな先生入れるなんて、よほど自由な私学なんですかね。
すでにまいってないじゃないか、むしろ見せてない日の方が気分的に参ってるんじゃないかと疑うほどです。
でもこの人たぶんちゃんと見せパンで、2回目以降さわったら「タッチ禁止なんですー」などとチクッといいそうですね。


エッチなことに興味津々の八百屋の次女、ちょっと身体が大きい、という雰囲気ですね。先生じゃなくて生徒ですが。
スカートをめくられてるというより、コッソリめくって見せてくれてるようにしか見えません。
ヘタすると「ねえアタシも見せたんだから、そっちも見せてよ」とかいって、うっかり服を剥かれそうな小悪魔感があります。


マチコ先生はセクシーだ、というところに拘泥しすぎ、大人の女を描くことに夢中になりすぎたパターンです。
だからボディコンだし、チチと尻にばかり意識が集中。顔がないというのは前代未聞ですね。
ていうか誰だこれ描いたの!! たぶんこの人トイレ落書き派だと思う。そう、いきなり局部描くヒトです。
よく歳をとってくると顔はどうでもよくなってきて、尻とかばっか見るようになる・・・と聞きますが、ここまで露骨だとそうとう問題です。
誰が描いてくれたのかは今となっては知りようがないですが、同僚のことは、知らないほうがいいこともある・・・とお茶を濁しておきましょう。

別のものが見えていた人たち

ここからはいわゆる問題派閥です。変態ぞろいでビックリしました。

小悪魔系魔女っ子


魔女っ子が混ざりすぎてますね。
エリ、スカートの尻ハネ、髪型、おなかの開いた服、外国の高いネコみたいなギラギラした瞳、口元もデフォルメ気味です。
「うーん、まいっちんぐ!!」といわれたら、たぶんさわった男子生徒はカエルに変身しますね。
ここまできたら、なぜスティック持ってないんだとツッコミたくなります。
魔女っ子とまいっちんぐマチコ先生を混同しただけならばまぁアリですが、そうじゃなくてこのヒトの考えるセクシー像がコレ、というのであれは問題だらけです。 リアルでリビドーが解消されてる気がしません。

顔面無パーツ


輪郭だけあって顔のパーツが一切ありません。
絶対にスカートをめくりに行く気がしませんね。
なにしろ振り向いたらのっぺらぼうですから。「不安の種」に出てきそうです。
血を抜くため、萎えさすために逆にめくりに行くのはアリですが。
これ誰が描いたんでしょうか。机に置いてあると怖くて仕方がないので、すぐに裏面にひっくり返しました。

ミクロ館の館長がみたマチコ先生


やはり常人とは発想が違いますね。パーツ分けしてきました。
まいっちんぐマチコ先生描いて、と伝え、まさかガチャポンみたいにパーツで分けて分解図を提出されるとは思ってもみなかった。
造形にこだわるミクロ館館長だけあり「造形的には顔と足のハネだけで十分♪むしろ胴体はいらない一品です☆★」くらいのものに違いありません。
その割に脚クニャクニャだし、だいたい半ズボンじゃパンツが見えないんじゃないか?
でもこれランナーはずし、切り済みなので、未切りよりもぐっと査定額は低くなりそうです。だめじゃんか館長。

安部慎一ファンの描くマチコ先生


描いてくれたのはもと漫研、ときいたので絵的にはマシかと考えてたのですが、そういった先入観がすべて無になる暗黒さです。
描いてくれ、とたのんでしばらく経ち、僕が忘れたころに提出されたそれは、
ほかのスタッフが数センチ四方に収めてきたはるか数倍の、A4紙いっぱいに描かれてきました。大迫力です。
マチコ先生に陰影をつける必要があるのでしょうか。暗さとは無縁のアッケラカンとしたエッチさが売りなのに、ユズキカズとかつげ忠男などがつけそうな陰影がついてます。耳とか前髪の処理とかも謎です。
全体に漂う気配が妙に粘着な感じで、セクハラ一発で一生つきまとわれそうなリスクを感じさせるキャラです。生徒には人気が出ないと思う。

土偶、はにわ系マチコ先生


古代日本、未発達な村落社会がやっと形成されつつある時代にマチコ先生がいたとして、
かれらがそれをたたえる意味でなんか作ったとしたら、きっとこんな形のものになるのでは。
だからこれは土偶です、土偶なのです。
腰に当てた手、不敵な笑み、内部的にどう収拾をつけているのかサッパリわからない髪、
Vネックなど、なにもかも、1ミリたりともマチコ先生ではありません。
何されても応えないし、まいらないことが前提ですから。この人は。

いままでのパターンはまだ「スカートをめくることが可能かどうか」が焦点となっていましたが、
もはやこんなん来たら近づくのですらそうとう危険です。
人間の形をした何か別のものです。意思の疎通は諦めなければいけません。
両の瞳でカッと見たマチコ先生が、脳内に保存されたとたんにこういう風に圧縮されるという未知のメカニズム。
これは貴重な症例として集めとくべきだと思います。
それにしても子供に家族を描かせたとき、顔のパーツや黒目を入れない子供には感情発達に問題があるとか聞いたことがありますが、 ここまで黒目を入れないことに疑問を抱かないスタイルだと、人間には黒目なんかいらないんじゃないかなどと思えてくるから不思議です。

幼少期に親の愛情を注がれなかった人が描いた「まいっちんぐマチコ先生」


だって人間の等身ですらないんだもん。そうとしがいいようがないですよ。
フクロウ?
たまごっち?
アイヌの人形? 王家の紋章?
かわいいのか怖いのかすら人によって違うというなんだかたいへんヤバげなもの。
これがマチコ先生ですか!! ずいぶん無感情ですね。
これがマチコ先生だったら、絶対にいまの30代の人たちが幼少期の微エロよもう一度・・・なんて思って買ってくれないと思う。

その時々によって別のものに見えてくるから不思議です。
僕には「ファンタジーゾーンに出てきた5面のボス、ポッポーズ」に見えました。あなたは何に見えましたか?
まさか前回とトリが同じ人になると思わなかった。最近の若い子は怖いですね。まさに「神絵師登場!」。
両の瞳でカッと見たマチコ先生が、脳内に保存されたとたんにこういう風に圧縮されるという未知のメカニズム。
これは貴重な症例として集めとくべきだと思います。

ちなみに今回もっとも近かったのが

これです。カマボコ型の目、まつ毛、学習マンガ風の髪の毛。これですよ。
いつのまにか全裸にされちゃってますけどね。

で、正解がこれ。

ちなみに平成になってから「まいっちんぐマチコ先生 ピンクボックス」という本が出たのですが、それがやらしいんですよ。これ。

えびはら先生・・・。小学生んとき読んでたら、絶対あとあとまで尾を引く気がする・・・。

ラストは僕が描いた奴ですが、

「まんがはじめて物語」のモグタンがヅラかぶっただけにしか見えないな・・・ああ僕はセクシー否定派ですね。

「まいっちんぐマチコ先生」オリジナル版はマニア館。
再収録版とピンクボックスは本店2で取扱しております。
無毛だった半ズボン時代を懐かしく感じるようになった生涯一男子は、本店2へ急げ!

※この記事は2007年9月26日に掲載したものです。

(担当岩井)

お問い合わせ (営業時間:12:00〜20:00)

まんだらけ中野店(詳しい店舗地図はこちら)
〒164-0001 東京都中野区中野5-52-15
TEL:03-3228-0007 / e-mail:nakano@mandarake.co.jp