岩井の本棚 「本店レポート」 第21回

「75年は吉田の時代だ!!」で分かる人向けアイテム


これは僕が高校1年のときの話ですが、「伝染るんです。」1巻の発売日は記憶に残っています。この日からギャグマンガが確かに変わったのです。

はやくから発売日をチェックし、待ちわびて買った記憶があるのですが、 1巻の発売は連載からわりと経ってからでした。4コマで一回が4ページだから一冊分溜まるのに時間がかかったのです。

「伝染るんです。」1巻の発売日は、この吉田戦車のセンスが本当に理解され受け入れられ、それが実際に「売れる」という、いわば形を伴ったものなのか・・・といった意味あいがありました。

「伝染るんです。」はスピリッツの巻末枠での連載でしたが、この枠の前任は「コージ苑」。
やりたいことをやり尽くした感もありましたが、3巡目は人気にややかげりが出てしまい、やや尻すぼみで連載を終了。 とはいえ大人気作家だった相原コージの後枠だったので注目度は非常に高かったのですが、連載開始直後、吉田戦車という名前を以前から知っていた人はあまりいませんでした。

僕はそれ以前から名前を知っていたのですが、それは何かのエロマンガ雑誌でなんとなく目にしたことがある(パパイヤクラブではないでしょうか)程度で、「追っていた」わけではありません。

やがて連載から数週たつと、面白いのはわかるものの、これはみんなに「アレスゲー面白いよ」といっていいものなのか。 万人の支持を受けるものなのかという部分で、けっこう多くの人が半信半疑だったのです。

そして発売日。僕は大きな書店で買ったのですが、次から次へと白い紙カバーの「伝染るんです。」を手にとる人が現れ、売れていることに何故かホッとしました。
その日から旧来的なギャグの延長にあった相原コージから、まったく感覚の異なる新世代・吉田戦車へとギャグの方向性が変わったのではないかと思うのです。
日がたちその売れ方がかなりのものであることが分かり、たちまち時代の寵児となった吉田戦車ですが、 あれだけ売れたにも関わらず、近いところまでいけた模倣者や追随者は出なかったのではないでしょうか。

もちろん不条理ギャグという得体の知れないくくり(べつに不条理ではないですよね)で呼ばれたマンガ家は何人もいたのですが、 しかし現在でも衰えることなく面白くしかも生き残っているとなるとほとんどいないようにも思えます。

その伝染るんです。3巻のあいたページにときおり「こぼれ話」が記載されていました。 そこに「カードゲーム「吉田戦車のともだち自慢」は掛値なしにおもしろい」と一言あったのを覚えている人はどれほどいるのでしょうか。

小学館は人気になったマンガをカードゲームやパーティジョイにするのをよくやっており、これもそのひとつ。
短冊状のカードに伝染るんですキャラクターの顔の一部分が描かれており、それを数枚あつめて顔をきちんと完成させるというゲームです。

伝染るんですキャラ勢ぞろいとありますが、実質一話しか登場しなかったキャラクターもいます(まだらのヒモとかたいへんロボとか)。
珍しいのは山崎先生の正面からの絵が見れる部分。とがった口の山崎先生、正面から見ると気持ち悪いですね。


モノがモノのため、正直なところカードが全部揃っているのかは確認できなかったので、現状での販売となります。840円。
このあたりの関連グッズって、古本屋みたいに掬い上げる存在がないからか、たいした年数が経っていなくとも残らなくなってますね。 あと吉田戦車の本といえば祖父江慎(コズフィッシュ代表)ですが、祖父江慎装丁じゃない吉田戦車モノ、という見方もできるかも。

そういえば祖父江慎の造本センスが爆発した1巻は、ページの意図的重複や帯が斜めカット、 空白ページが延々と続く(ノンブルは振られているので意図的と分かる)、 栞のひもが短いなど遊び要素が詰め込まれていたため、乱丁本ではないかと返本が相次いだという伝説があります。
そのため後続巻の帯に「この本は乱丁本ではありません」とわざわざ大書きしたことがあるほどです。

余談ですが「ともだち自慢」、外箱裏に対象年齢みたいな感じで「遊べる人数 2〜7人 年齢 5〜114歳」とありました。
114歳には理解できて115歳にはムリというのは何区別なんでしょうね。
115歳の老齢は5歳未満とたいしてかわらんということでしょうか。
ということはアーカードと荒木飛呂彦はこのゲームをする資格がないのかもしれません。ってアーカードは実在じゃないけどね。
※この記事は2008年7月23日に掲載したものです。

(担当 岩井)

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