岩井の本棚 「本店レポート」 第20回

植芝理一はたぶん公立高校の野暮ったい女子制服が好きなんだと思う、だってその登場頻度すごく高いんだもの


前回がアフタヌーンの話だったのでそのつながりで植芝理一を紹介しましょう。

氏のデビューはいまから、17年くらい前でしょうか。

僕は当時やっと
「自分はこれから一生、マンガと関わりを持つ人生を過ごすんだ」
という規模が小さく意味のわからぬ不退転の覚悟・・・
・・・おおくのオタクの人は20歳までにそれと似た「マトモな社会に背を向ける決意」を持つものだと思いますが、まあそんなようなものです・・・
・・・を持つに至った、迷い道に踏み込んだばかり、生まれたてピヨピヨの僕は、 何気なく読んだ雑誌での植芝理一の登場に、ひどくショックをうけました。



空間恐怖症と思うほどスミまで描かれ、トーンをほとんどつかわず真っ黒なページ、 多数でてくる宗教的オブジェ、不思議キャラで現実味はないけれど存在感があるキャラクターたち・・・。
それまで読んだことがあるマンガと明らかに異質なものだったのです。

氏の作品「ディスコミュニケーション」読みきり版が初めて掲載された時、 モーニング(四季賞ではなくコミックオープン受賞だったため、アフタではなくモーニング本誌に掲載された)からその回を切り抜きました。
それこそ何度も何度も読み返し「これはスクラップしなければなるまいぞ」と意気込んでやみくもに切り抜いた記憶があります。 何がそうさせたのかわからないのですが、登場からしばらくの植芝氏には、そうさせる何かを持っていたのです。

その後アフタヌーンで連載がきまり人気も得ていくのですが、単行本で6巻か7巻くらいかな・・・ディスコミュニケーション冥界編になり、 戸川と松笛の心の内側の話にうつってからはどうもついていけなくなって、単行本購入をストップ。
やがて物語を追うのもストップしてしまいました。今となっては何故あの時ちゃんと読んでおかなかったのかと悔やむのですが・・・。

今回出すのは植芝氏の個人誌「隔月刊イヴニング2.1」。
中は単行本に収録されていない一枚絵(初期ディスコミ風)、没ネーム、戸川や松笛のキャラ設定を悩んでたときにノートに書き記したラクガキ。などなど・・・。 松笛が表紙の同人誌「イヴニング2」を再構成した内容となっているそうですが、あいにくそちらは未見なのでどれだけのページが増えているのかは不明。
圧巻なのは「近況特集」。そう、連載時にハシラにある近況をのページ。
変人で名を馳せるだけありコメントもまともじゃなくて最高です。ちょっと抜粋。
『東急ハンズで小さな黒板とチョークを買いました。夜中に一人で落書きしたりして笑ってます。それから先日の朝、たくあんでごはんを食べていたら、あまりにおいしくて涙が出てきました。なぜでしょう?』
『先日、目つきの危ない犬に追いかけられました。怖かったです。あと、路上でヨーヨーをひろいました。おもしろいです。』
『好みの男の子を見ると(別に僕はゲイじゃないけど)頭にリボンをつけてあげたくなる。担当N口氏は、ごく普通の「おじにーさん」(おじさんにかなり近づきつつある、おにーさん)で、別に好みじゃないんだけど、なぜか目だけは少女のようにキラキラしてるから、今度つけてあげてもいーよ。』
おじにーさんとは何ぞや。
ディスコミ学園編に女装少年のパンチラが目立ったことがボヤ〜っと思い浮かぶ近況ですね。

読んでるとやはり奇人、変態と言われるだけあるなあと思わざるを得ません。
ハシラとか近況が面白い作家はたくさんいますけど、案外まとまって読む機会も少ないもの。雑誌の目次にある作者近況だけ延々と集めた本、誰か作ってくれないかな、絶対買うんだけどな・・・。

植芝氏は関連書籍が少ない(作品以外だと「CGイロハのイ」があるのみですが、この本も肉声が多く読み応えアリ)から、ファンは必携ですよ。3150円。

あとは最近のですけど「謎の彼女X」2巻と3巻のショップ特典ペーパー付き。
ペーパーの中身が分かっちゃうと面白くないので画像はなし(イマ風制服に身を包んだ占部がみれます)、これは買ってのお楽しみということで。

え?タイトルと内容関係ないじゃないかって?そういえばそうですね、いやつい、書きたかったものですから・・・。

※この記事は2008年7月17日に掲載したものです。

(担当 岩井)

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