岩井の本棚 「マンガにでてくる食べ物」 第12回

「カニ」

夏休みにはいりましたね。
こう毎日暑いと海に行きたくなります。
実家が海沿いの町だったので、夏であろうとなかろうと海には頻繁に行ったのですが、関東に引っ越してからは、何か用事を作らないと気軽に海にいけなくなりました。
海の近くで育ったせいか、子供のころは海産物系のおかずでは喜んだりしませんでした。
時期にもなると毎日のように刺身やカニが食卓に並んでたのです。
当時はそれが普通だったから「また魚かあ」とありがたみ全然ありません。
今だったらカニと刺身で一杯、なんていったら飛び上がって鴨居に頭をぶつけるくらい喜ぶんですが。

で、今回はカニの話なんですが、実際の所ふつうの人たちは一年に何回くらいカニを食べるのでしょうか?
一匹まるごとの単位ではなく、足で何本、というのがリアルな数でしょう。
高いし、一匹まるごと食べる機会もあまりあるものではありません。僕も今年はまだ実家に帰ったときに1匹食べた程度ですが、たぶんうちの親父なんかは年間3・40匹くらい喰ってます・・・ってそれは食いすぎだよ!


図1



図2

でもそんな一般的な食べ物とはいえないカニですが、マンガには何故かよく登場します。
とくに前回も紹介した吉田戦車さんはカニが「伝染るんです」ではハサミではなく人間の手をしたカニが登場、「ぷりぷり県」では越前ガニのうまさが語られ、そして連載中「殴るぞ」でもたびたび登場します。
カニによほど思い入れがあるのでしょうか?
カニ、といえば食べるのに手間がかかるから食べ始めるとつい無口になる、といわれていますが、 それをネタに、カニが自己進化して1000万年後には超食べやすい食べ物になる、というオチのもの(「殴るぞ」4巻・図1)と、 ズワイガニ、のズワイ、とはいったい何? というネタです(「殴るぞ」5巻・図2)。それにしてもこの「ズワイ猫」ってメチャクチャいいネーミングですよね!
ズワイ猫って本当にいたら(たぶん肉球はやたら硬いと思う)、たぶん僕5万くらいまでなら出しますよ。


図3
田中圭一の手塚パロディ本「神罰」では、永井豪パロディでカニの怪人「鬼鋏のズアイ」が出てきて、デビルマンもどきが食べ方指南する(図3)。
カニは確かになれていないと手間ばかりかかっておもしくないです。
ただ描写のせいかカニ感は薄いですね。

図4
少年誌ラインでもっともカッ飛んだギャグマンガ「ピューと吹くジャガー」2巻では、ジャガーさんが「おやつ」と称してたてぶえの中にカニを入れています(図4)。
カニを食べると手が汁だらけになるのと、時間が経つとけっこうカニは匂う、という感じが出ていてカニ感高しです。

しかしどんなにカニが好きだからといっても、カニは主食じゃないからバクバク食べるにも限度ある、というのへの反論としては、押川雲太郎「不死身のフジナミ」で、主人公の敵方で「カニしか食わない男」ことタイガーが登場。
このシーン、このセリフがすごいいいんですよ。


図5
「カニは生を焼くに限る」

「焼くと甘味が出てうまい こいつを煮たり蒸したりする奴の気が知れない」

「俺はカニ以外のものは何も食べない カニのないところには行かないことにしている」

全巻通して読んでないのですが(話的には「根こそぎフランケン」とか「BET」みたいなギャンブルモノのほうが押川色が強くて面白いです)、カニで作ったカニアイスまで登場するこの物語、ストーリーもかなりの狂いっぷりで、アクションマンガではないのにジョン・ウーばりの大爆発が連発。
登場人物はみんな笑いながら人を殺します。
武器商人の話というよりもエキセントリックな主人公とカニ狂いタイガーばかり印象に残って、それ以外のキャラが全然思い出せません。アッパーズという本は病んでたんですね。

余談ですが、カニの話を某辻中店長(北海道生まれ)に話したところ「カニは生を焼くのが最高だよなあ〜」といってました。
カニ好きの真理がまさか辻中店長の口からきける、と思ってなかったので小躍りしたのを思い出します。

※この記事は2004年7月30日に掲載したものです。
(担当 岩井)

お問い合わせ (営業時間:12:00〜20:00)

まんだらけ中野店(詳しい店舗地図はこちら)
〒164-0001 東京都中野区中野5-52-15
TEL:03-3228-0007 / e-mail:nakano@mandarake.co.jp