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幻の漫画少年 全リスト

文・相澤亮一

「漫画少年」と私(2)
おおみそかを私のいなかでは年とりの日と呼んでいた。さけの塩引きがついた夕ご飯を食べ、年を一つとるという数え年の習慣があった。食べ終わると、こども達は小遣いを貰うことができた。お年玉を一日早く貰えたのである。
「漫画少年」を定期的に買い始めたのは、昭和二十五年からである。二月号(お正月大愉快号)は自分で買い、三月号から毎月父に買って貰った。
友人が「野球少年」を買っていたので、私は「漫画少年」にした。
絵が好きだったので、「バット君」の絵を真似たりしながら、大変稚拙な絵だったが、ハガキによる漫画を投稿し始めた。
「漫画少年」は創刊号から読者の投稿作品を募集しており、毎号、愛読者の漫画成績大発表を行っていた。
昭和二十五年新年号、即ち創刊三年お祝い号は発売後一年ほどして、友人から譲って貰った。
ますます発展する「漫画少年」の勢いを感じさせる号で、表紙の斉藤五百枝筆の「天馬」の絵と、最終頁に載っている次の言葉に代表されている。

日本の子供たちよ、明るく正しく伸びよ、子供の笑顔はお國を明るくする。−こういって生まれ出た漫画少年は、もう創刊三年目のお正月を迎えることになりました。(途中略)この新年号の表紙をもう一どごらん下さい。天馬にまたがって暁の空をかけてゆく少年の元気なすがたは、昭和二十五年の漫画少年のたのもしさをそのままあらわしています。
漫画少年は、希望にかがやく雑誌です。
漫画少年は、日本の少年少女の楽園です。
漫画少年は、花も実もあるたのもしい雑誌です。
漫画少年は、家中の人がみんなで楽しめる雑誌です。
今の日本に、これほどたのしい明るい雑誌がほかにあるでしょうか。
つづく二月号(お正月大愉快号)をご期待下さい。(以下略)

二月号は五百枝筆の「入選のよろこび」の表紙絵で、印象に残っている。
四月号は島田啓三の「だんご仙人」極楽篇がおもしろかった。福井英一がかきなおした「バット君」の絵を、トレースしたりしてよく真似たものである。
「よくできた漫画」の欄に、初めて自分の名前が小さく載った。
また、大懸賞募集があり、野球選手の肖像画をペンか鉛筆で描くものだった。
大好きな別富選手を描いて送ったが、選外佳作だった。
七月号にその発表があり、青バットの大下選手を描いた横尾忠則が入選していた。
投稿した漫画などが掲載されると、賞品として入選記念メダルが貰えた。
記念メダルは昭和二十六年四月号の頃からバッジに替わっていく。
バッジの図案は、創刊三年を記念して募集したマークコンクールの中から決められた。
読者の投稿により、松崎嘉夫案のマークが選ばれた。十月号に発表されている。
続く十一月号は正にびっくりの号だった。予告なしで「ジャングル大帝」が載ったのである。
そのため、私は昭和二十九年四月号(ジャングル大帝完結篇)まで「漫画少年」「ジャングル大帝」のとりこになった次第である。

さて、手塚治虫の本について記してみる。初めての出会いは、やはり「新寶島」で、昭和二十二年四月一日発行の初版と信じている。
初版と信じている理由として、黒インクで印刷された絵やふきだしの文字が、ほとんどの頁で表にも裏にも写った状態で、大変読みにくかったことである。それに、紙もうすかった。
初版をお持ちの方がおられたら、再販との違いについて、是非ご教示願いたい。
また、もう一つの理由として、生家の近くに昭和二十一年頃から「農村文庫」という小さな図書館があり、そこにあった「ピリチャンの実験室」が現在、私の手もとにある。
発行は昭和二十一年十二月十日である。戦前から昭和二十二年、二十三年発行の図書が揃えられていた。
「新寶島」も「ピリチャンの実験室」も、生家の近くにあった図書館で借りて読んだ。

その頃買った漫画は「天狗のお面」昭和二十二年五月高野てつじ、「怪人コロンコ博士」昭和二十二年十月・手塚治虫、「ヤジ太郎キタ六漫遊記」昭和二十二年十一月・中野正治などがある。
田中晋一の「宇宙ロケット」昭和二十三年一月大阪金星書房発行は、紛失してしまったが是非手に入れたい一冊であり、探求中である。

まんだらけ目録8号より

S23.10.05 別冊
雑誌にカバー付きがあるとは!大珍品である。とくとごらんあれ。
掲載内容「エンヤコラサノ助」(原一司)「ほがらかハヤちゃん」(井上一雄) 「もんご山の怪物退治」(芳賀まさお)など。
他に佐次たかし、澤井一三郎、中野正治、倉金良行、長谷川町子などの 素晴らしい漫画がずらり、どれをどう見ていったらいいかまごまごするほど面白い。
大変売れ行きがよく再販を(カバーをつけて)発行。



S23.10.20 11月号
「バット君」と「銀星」の連載が続いていて息もつかせぬ面白さである。



S23.11.20 12月号
大発展をした「漫画少年」、漫画や読み物など連載が豊富である。
「初旅坊ちゃん」「親鳩小鳩」「バット君」「カンラカラ兵衛」「銀星」などが載っている。



S23.12.20 1月号
足の向くまま気の向くままにぶらりぶらりとのんきな旅よ、エンヤコラサのホイホイホイ。
とじ込み第二付録「エンヤコラサの助」(原一司)。
第一付録は(井上一雄)「おてがら早ちゃん」。
バット君が新年子供大会でサインボールをノックする場面は圧巻である。
また、新しく「だんご仙人物語」(島田啓三)が始まり、一周年記念愛読者傑作漫画展覧会も呼び物の一つである。



S24.01.20 2月号
色刷漫画「見学大地図」(中野正治)、着色写真「仲良しホームラン王」が巻頭を飾る。 「見学大地図」は社会科勉強に役立つ。
連載漫画と読み物は相変わらず素晴らしく見応えがある。



S24.02.20 3月号
懸賞漫画の入選者におくる桐箱入りのメダルが初めて掲載される。 当時の読者が投稿漫画に大フィーバーしたと推測される。
「漫画大閤記」(石田英助)スタート。「銀星が捕まった!」この名馬をつかまえるために快漢トムとジム少年はどんな苦心をしたのだろう。一ヶ月後にせまるカーボーイの競争、展開はいかに!手に汗握る。



S24.03.20 4月号
「てるてる日記」(澤井一三郎)と小説「眼ざめいく子ら」(下村湖人)が新たにスタートする。



S24.04.20 5月号
名馬「銀星」!!快漢トムとジム少年は誰にも見つからぬように森の奥に隠れて銀星をならしている。
風より早い馬!!鋼鉄のように強い馬 獅子より恐ろしい荒れ馬!!その銀星にジム少年がまたがって今やスタートラインに向かっていく。



S24.05.20 6月号
「カンラカラ兵衛」は5月号でめでたくカラ助に会う。カラ兵衛の一子「カンラカラ助」の第一回が始まる。
山野ではどうやらならすことのできた「銀星」、大競馬ではうまくのりこなせるかどうか。



S24.06.20 7月号
以下、名馬物語「銀星」の最終回より抜粋。
−こえ高くいなないた銀星は、トットッと百米も進んでから一度ふり返った。
そしてきびすをめぐらすや、風のように大高原の彼方に消えていった。たてがみと尾を高く高く翻しながら−。 峠の上からジム少年とマリアンが、その峠の下でトムが、いつまでもいつまでもこの名馬を見送っていた。
「バット君」 の井上一雄先生急逝、井上賞を制定する。